ソロで活動している時の福子は輝いていました。得意の英語を活かしてのホテルフロント業務、3回に渡って萬平の冤罪を晴らした情熱と行動力、塩の売り上げをピンハネした世良を見事にいなし、大物実業家から新規事業の融資までとりつける機転。どうしてインスタントラーメン開発という物語の佳境に入った途端、「萬平さん」「萬平さん」「萬平さん」のリピートになってしまったのか。
「邪魔しませんから萬平さんの仕事を見せてください」
— 【公式】連続テレビ小説「まんぷく」 (@asadora_bk_nhk) 2019年1月31日
「うれしい、萬平さんを手伝えて」
心から萬平さんの支えになりたいと願う福ちゃん。でも好奇心もあるんでしょうね。楽しそう! 冒険の旅!#まんぷく #朝ドラ #安藤サクラ #長谷川博己 pic.twitter.com/wqvkFfkCny
“わたし”が主語になる福子を見たい
と、ここまで書いて、ふと脳内にあの能天気なナンバーが流れ始めました。「もらい泣き もらい笑い もらい怒り」「もらいっ恥じ どんと来い!」。そう、『まんぷく』主題歌、ドリカムの『あなたとトゥラッタッタ♪』です。
じつは答えは最初から提示されていたのかもしれません。『まんぷく』のテーマは『あなたとトゥラッタッタ♪』なんですよね。『わたしがトゥラッタッタ♪』ではなく。この主題歌で、このドラマでフォーカスがあてられているのはつねに“あなた”。“わたし”は自分のことでは泣かないし、自分のことでは笑わない。すべて“あなた”からもらうんです。
夫婦の形はそれぞれだし、そもそもこれは物語。そこにイロイロ持ち込んでアレコレ語るのは粋じゃないかもしれませんが、安藤サクラの陽性で巧みな演技に騙されちゃいけないとも思うのです。いくら福子が萬平の発明家としての才能を信じ、自ら働いて支えることに喜びを感じているとしても、夫婦で、家族である以上、誰かひとりの犠牲の上に成り立つ関係はやっぱりおかしい。
それにしても、年明け早々話題になったあの広告で「わたしは、私。」「時代の中心に、男も女もない。わたしは、私に生まれたことを讃えたい。」と勇ましく凛とした笑顔を見せていた安藤サクラが、夫を支えることのみに邁進する妻を演じるモヤモヤよ。せめてインスタントラーメンの流通→販売ターンに入ってからは、“わたし”が主語になる福子を見たいと切に願うばかりです。