やはり愛は冷めるのか。永遠の愛などないのか。ええ、あんなに愛していたはずの『まんぷく』さん。

「一回も見逃すわけにはいかぬ!」が、「あ、今やってるけど……いいか」に。NHKオンデマンド会員にまでなったのにそもそも予約録画もしようとしなかったのは最初から虫が知らせたのね……。

 しかしこうなってみると「何が私を『まんぷく』に惹きつけ」たのかわかった。

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 哀愁だ。

『まんぷく』が始まった時に見えたのは、「この朗らかな良い人たちが悲しい運命に翻弄され、何もなくなった風景だけが残り、もう決して戻ってこない笑顔が次々に浮かんで消える」という幻想の最終回。

 そういうストーリーでもっとも泣けるようにセレクトされた俳優陣だったのである。要潤、大谷亮平、桐谷健太、浜野謙太……と、こう並べて別にそんな涙をそそるメンツではないが、実は哀しみがすごくよく似合う、ということを気づかせる役が当てられて意表をついた。

世良勝夫を演じる桐谷健太 ©文藝春秋

 私は最初の頃、桐谷健太が出てくるたびに、彼(の役)のかわいそうな最期と、オーバーラップする笑顔が思い浮かんで泣いていた。いい加減でテキトーで調子がよくて、困った時にはスタコラサッサと逃げちゃうような男だけど、底抜けに明るく、ちょっとした時に主人公のことをなぐさめてくれたりする。こんな健太がインスタントラーメン成功のお祝いをパーッとやってくれて、別れたあとに酔っ払って川に落ちて1人で死んじゃうの。いや勝手な想像です。浮世離れした要潤もやさしい大谷亮平も、みんなきっと死んでしまうんだ……! そんな哀しみを秘めたドラマなのだ。

 それがどうだ。今や誰も死ぬ気配がない。全員ピンピンしてる。哀しみというものがキレイさっぱり拭いとられ、何かコント要員のようになってしまった。