『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語』(田中靖浩 著)

 簿記の知識がある人でも、それがイタリア発祥のものであることを知る人は少ないだろう。減価償却という発想が鉄道会社の登場によって生まれたことを知る経理担当者も、ディスクロージャー(企業の情報開示)のはじまりに「JFKのお父さん」が関わっていることを知る公認会計士や税理士も、おそらくは同様か。

 そんな会計の歴史を、レオナルド・ダ・ヴィンチやザ・ビートルズといった人々が織りなす物語として描きつつ、簿記・会計・ファイナンスの全体像をわかりやすく伝える本が話題だ。

「著者は企業研修や社会人向け講座などで長年会計の授業をされてきました。そうした経験の中で、あまり興味がない人でも会計の話に耳を傾けてくれる切り口が、歴史と絡めることだと気づかれたそうです」(担当編集者の赤木裕介さん)

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 たしかに、講談調で披露されるエピソードの数々に引き込まれるうちに、自然と知識が身についていく。

「書店では、会計だけではなく人文書のコーナーにも置かれていて、そこでの動きがいいんです。ビジネス書読者の“教養としての世界史”需要に応える、テーマ史の本として楽しまれているようです。ベストセラー『東大読書』著者の西岡壱誠さんは、東大入試の世界史対策に役立つとおっしゃっています。意外な視点でしたが、学生の方の世界史学習のお供にもなれたら、うれしいですね」(赤木さん)

2018年9月発売。初版9000部。現在6刷5万部

会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語

田中 靖浩

日本経済新聞出版社

2018年9月26日 発売