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東急電鉄「Qシート」の大井町線ユーザー優遇ぶりがスゴい

料金は400円。座席の下にはコンセントも

杉山 淳一 2019/02/18

車掌と数名の駅員が「乗れません」と声を掛けつつブロック

 二子玉川駅から降車専用区間だ。しかし降りる人はいない。この駅は田園都市線と同一方向同一ホームの乗換ができる。渋谷から田園都市線に乗ってきて、ここから大井町線の急行に乗り換える人も多い。とくに「Qシート」は車体色が目立つ。窓の中は空いていて快適そうだ。混雑に疲れた人が乗りたくなる気持ちもわかる。しかし、車掌と数名の駅員が「乗れません」と声を掛けつつブロック。駅員はブロック係だ。

「Qシート」車両の外観。鮮やかなオレンジ色が目立つ 写真提供:東急電鉄

 隣の車両の混雑が増して、人いきれで窓ガラスが曇っている。溝の口駅で1名降車。ここは駅員が少なく、1名が扉前で阻止され、車掌の隙を突いて3名が乗り込む。このうち2名が追い出され、1名は発車間際のため、隣の車両へ促された。「Qシート」を知らない人にとっては納得しがたい仕打ち。反感を買われないか心配になる。

 鷺沼駅で1名下車。全体的に下車客が多い駅で、両隣の車両も空いてきた。「Qシート」に乗り込もうとする人はいない。もっとも、このあたりは田園都市線全体でも降りる人が多いエリアに入る。発車後に車内放送があった。「たまプラーザ駅からはどなたでもご利用いただけます」。そう、指定席区間はたまプラーザまで。そこから先は、指定席に座った人は既得権で座っていられる。

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「Qシート」連結車両は、昼間は通常の列車として運行されている(座席指定料金は不要) 写真提供:東急電鉄

たまプラーザ駅で「Qシート」空席を狙うのが賢い

 たまプラーザで3名下車。意外と少ない。通路側の人が空いた窓際に移動する。乗車客は数人。ここからは乗降自由だから制止されない。そもそも車掌2名もここで降りてしまった。隣の車両から乗り移る人が1名。この人は賢い。私も「Qシート」が満席なら、隣の車両に乗ってたまプラーザ駅で空席を狙う。あざみ野駅では1分ほど停車し、隣の車両から移る人が2名ほど。「Qシート」の仕組みが田園都市線利用者には周知されていない印象だ。

 東急電鉄は田園都市線の二子玉川駅~渋谷駅の混雑を緩和するために、二子玉川から大井町線へ通勤客を分散させたい。そのために大井町線を溝の口まで延伸し、大岡山駅を改良して目黒線と乗り換えしやすくした。

東急は、田園都市線二子玉川~渋谷間の混雑緩和のため、さまざまなサービスを打ち出している。夏に運行される「時差Bizライナー」もそのひとつ ©AFLO

「Qシート」もその作戦の1つ。帰りに「Qシート」に乗りたいなら、定期券を大井町線経由にしてください、と暗に促している。東急電鉄としては、渋谷から帰る通勤客を「Qシート」に乗せない。そこに強い意志を感じる。二子玉川駅と溝の口駅の「乗車客との攻防」が、象徴的な場面だった。

東急電鉄「Qシート」の大井町線ユーザー優遇ぶりがスゴい

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