都会の電車はとかく遅れがちである。朝のラッシュ時間帯には混雑や急病人救護などが原因で数分の遅れが生じることは日常茶飯事だし、人身事故で1時間あまり運転を見合わせることだって珍しくない。そして我々利用者も、どうしようもない事情をわかりつつもついイライラしてしまうのだ。「朝の遅れがなんで昼間になっても解消されていないの?」「直通運転のせいで遠く離れた場所の事故の影響を受けるなんて理不尽だ」などと――。
でも、当然鉄道会社も手をこまねいているわけではない。少しでも早く正常なダイヤに戻すべく奮励努力している(はずだ)。惜しむらくは、その状況があまり利用者に伝わってこないこと。一体鉄道会社はどうやってダイヤ乱れを戻しているのか。その裏側を西武鉄道で運行管理の運転司令長を務める藤田浩行さんに聞いた。
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ダイヤの遅れを解消するためのキホン
――単刀直入に聞きますが、ダイヤが乱れたときにはどうやって回復させているのでしょうか?
藤田 この質問はよく頂くのですが、わかりやすくお答えするのが大変難しいんですよね(苦笑)。人身事故などで運転見合わせになったり、諸事情で電車が遅れてしまった場合には、その影響をできるだけ狭い範囲にとどめておく、ミニマムにするというのが基本です。例えば下り線が遅れても上り線に波及しないようにするとか、一部区間が人身事故で停まっても運転できる区間ではできるだけ電車を走らせておくなどです。
――確かにちょっとピンと来ませんね。具体的な事例で説明して頂けませんか?
藤田 例えば、簡単な例で池袋線の保谷行き下り電車が遅れたとしましょう。その電車は保谷で折り返して上り電車になるので、遅れを放っておくと上りになってからも遅れを引きずってしまい、いつまでたってもダイヤが戻らないですよね。そこで、保谷で折り返さずにふたつ手前の石神井公園で折り返すように運用を変更するんです。このとき、石神井公園からの上りの定時にあわせるようにすれば遅れは解消されます。池袋線では石神井公園や保谷、清瀬、所沢、小手指など、新宿線では上石神井や田無などが折返し可能駅。そこで早めに折り返してダイヤ通りの上り電車に当てることで遅れを解消しているんです。
――なるほど。ですが、その例ですと大泉学園や保谷で降りたい人は困ってしまいますね。
藤田 そこは大変申し訳ないところですが、後続の電車に乗り換えて頂くしかありません。ただ、比較的ご利用の多い上り方面、池袋寄りの駅でこのような折返しを頻繁にやってしまうとご指摘の通りご迷惑をおかけするので、できれば所沢とか小手指とか、下り方面の駅でおこなうようにしています。そもそも当社では電車の種別も行き先も多種多様なので、実際には例に挙げたように単純にはいきません。でも基本的な考え方は同じで、応用しているイメージですね。