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「通勤ダイヤの乱れ、どう回復させている?」西武鉄道に“裏側を”聞いてみた

遅延を解消する「鉄則」とは

2018/12/10
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朝のラッシュ時の遅れはいつ回復する?

――運転本数が多いラッシュ時間帯でも同じような対応をしているのでしょうか。

藤田 いえ、ラッシュ時間の対応はちょっと違います。ラッシュ時間帯はご利用のお客さまが大変多いですよね。だから何より大事なのは輸送力をキープすること。遅れが出たからといって折返し運転をしていたら全体の本数が減ってしまいます。ですから、多少の遅れは無理に回復せず、そのまま池袋や西武新宿まで運転するようにしています。特に朝ラッシュで上り電車の途中打ち切り・折り返しは原則ないですね。だいたい7時から9時まではこういう対応で、その後の下り電車を調整してもとに戻していくんです。

西武鉄道、運転司令長の藤田浩行さん

――となると、ラッシュ時に生じた遅れが解消されるのはラッシュが終わってから、ということですね。例えば8時半頃に池袋に着いた電車が折り返して所沢とか飯能に着くころに回復していくと。

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藤田 そうですね。池袋から飯能までの所要時間はだいたい1時間です。遅れた電車が下りになって飯能とか小手指まで戻ってきてはじめて上りの正常化ができて、それがまた池袋に着くまでには少なくとも2時間くらいかかります。だから全部の電車のダイヤがもとに戻るまでにはどうしても2時間から3時間ほどかかってしまうんです。

人身事故が起きたときの“鉄則”

――なるほど、朝のダイヤ乱れがお昼ごろまで影響してしまう理由がわかりました。では、人身事故などで長時間の運転見合わせになった場合はどうしているのでしょうか。

藤田 実際の事例として池袋線の池袋から練馬の間の踏切で人身事故が起きたケースで説明しましょう。人身事故ですから警察の現場検証などもあり、池袋~練馬間は約1時間運転できません。これはしかたがない。でもだからといって全線で停めてもダメ。そこで最初に説明したように、石神井公園等の折返し設備や地下鉄直通電車は運転させて練馬より下りではできるだけ電車を走らせるようにするんです。そうすると、練馬より下りでは電車が動いているので都心に向かう人は練馬からの地下鉄直通電車を利用するか、所沢に戻って新宿線を使って都心に向かうことができ、少しでも利便性を損なわずにすみます。そして運転再開となったら池袋~練馬間を運転させて、その時間帯に池袋を出発する電車に充当する。そうすれば、運転再開後比較的早く通常ダイヤに戻すことができるんです。

西武池袋線を走る30000系の電車

――折返し設備がある駅を最大限利用して、運転見合わせ区間を少なくするということですか。特に練馬からは地下鉄に直通する電車もありますから、その点への留意も必要ですよね。

藤田 直通先にはできるだけダイヤ乱れを波及させずに電車を戻していくことが基本です。ですから今回取り上げたケースでは、直通電車の運行を優先することになりますね。練馬からは直通電車は極力運転することによって電車を動かしていく。そうすると運転見合わせ区間を最小にするとともに運転再開後にスムーズに定時運行に戻すことができるんです。時間帯にもよりますが、当社ではおおよそ運転再開から約1時間で通常ダイヤに戻すように意識しています。