ダイヤの回復、AIには頼れないの?
――実際にはより複雑な手順でダイヤを回復させているのでしょうが、こうした対応をする司令の仕事はまさに職人ですね。でも、お話を伺うとこうしたダイヤ回復はそれこそAIなどコンピューターに頼りやすい分野なのではと思うのですが。
藤田 そう言われることも多いんですが、現状ではAI頼みは難しいでしょうね。なぜかというと、人身事故、急病のお客さま救護も時間や曜日、その状況次第でまったく違うんです。急病のお客さま救護は必ず10分で終わるとわかっているならいいですが、それはやってみないとわからない。ラッシュ時は輸送力を優先するといいましたが、日曜の朝ならその必要はないですよね。メットライフドームでイベントがあって下り電車をご利用のお客さまが多い場合も事情が変わります。運転間隔の調整にしても、無闇矢鱈に抑止すればいいのではなくて、できるだけ大きな駅で停めたほうがいい。例えば、上り電車では中村橋で停めるならひとつ先の練馬のような乗り換え駅まで行って……とか。ひとつとして同じ状況はないですから、どうしても人が判断して指示しないとダメだと思います。
――なるほど……それだけ都会の電車の運行管理は複雑すぎるということでしょうか。最近ではさらに情報の発信も重要になってきていますよね。
藤田 当社の司令所では電車や駅との無線・有線通話がフロア中に聞こえるようにしています。そうすることで、すべての司令員が情報を直ちに共有して、必要なところに伝えることができる。それを駅や乗務員に情報を伝えて、最終的にお客さまに届きます。正確な情報をできるだけ早くお届けして、お客さまの判断に役立てて頂きたい。最近では、西武鉄道のアプリでリアルタイムの運行状況を見られるようになりましたし、それこそYahoo!などの運行情報でもかなり早く情報が出ます。そういう時代ですから、我々も情報の発信には特に意識を持っていますね。これから年末にかけては、夜から終電間際にかけて遅れが出やすい時期にもなります。安全・安定輸送はもちろんのこと適切な対応を心がけてできるだけご迷惑をかけないように、そして充分な情報発信もしていければと思っています。
写真=鼠入昌史