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「やりきった。ちゃんと悔いなく」安室奈美恵さんが私の前で語った“引き際”の美学

NHK「平成史スクープドキュメント」で総括した25年間の歩み

2019/02/21

原点に立ち返って「初めて音楽というものに触れた」

 そんなどん底を脱する転機は、コラボレーションのなかで掴んだ。平成15年、多彩なアーティストやクリエイターたちと切磋琢磨し、自由に新たなものを生み出していく機会を得て、自分にとって何が強みなのか、本当にやりたい音楽は何なのか、問われた。まるで解き放たれたかのように、自らの原点「歌とダンス」に立ち返った安室さん。「初めて音楽というものに触れた」と、音楽の真の楽しさに開眼することになった。

 目指すべき方向性を捉えてからの安室さんは、そこからブレることはなかった。不得手な作曲は信頼するプロフェッショナルたちに託し、テレビ出演などメディアの取材を絞って、1年の大半を、自分の強みの「歌って踊る」表現の場・コンサートとその準備に費やすようになっていった。

©getty

「私は歌うだけじゃなくて踊る」

 コンサートは、観客の反応を直に感じ取れると同時に、偽ることのできない生身の「安室奈美恵」が評価にさらされる場でもあった。観客がどう反応するのか、安室さんは毎回とても怖かったと言う。それでも観客の反応の前に自分をさらし、生のやりとりから演出を何度も練り直しては、作り変えた。

 コンサートの1回1回を、観客にとってその日その時だけの特別なもの、他に替えられない唯一無二のものにすることを目指し、楽曲やコンサートの演出も自ら選び取った。全体の演出では、「ライブ感を主体として軸に置いて、そこにいま流行っているもの、最先端なものを足していって、ライブ感がなくならないように、入れすぎたら引き算していく」ことに気を配った。

 コンサートを、新曲のデモ曲選びでも判断基準に据えたという。

「100曲、200曲とデモ曲を聞いた中で、前奏の引っかかりがある楽曲しかピックアップしないです。私は歌うだけじゃなくて踊るので、最初の前奏もとても大事なんですよ、私にとっては。コンサートで、この前奏でサッと照明をあてて、ダンサーさんがパパパッて並んで、そこで踊って歌が始まるっていう、そのストーリーがすごく好きだったりするので」