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絵画の経験が建築にすべて流れ込む

 ジャンヌレとオザンファンの絵は時代を経るごとに、色彩が華やかで、かつ自由に用いられるようになっていき、かたちもいっそう入り組んでいく。まるで描かれた一つひとつのものが溶け合って、なんらかの機能を持った巨大ななにものかに生まれ変わっていくかのよう。絵の各部分は、何かの部品か代数みたいに入れ替え可能かと思われてくるし、部分と全体も入れ替わってしまえるんじゃないかという不思議な感覚に陥る。

《女と花》フェルナン・レジェ 1926年 東京国立近代美術館
《灯台のそばの昼食》ル・コルビュジエ  1928年 パリ、ル・コルビュジエ 財団

 およそ10年のピュリスム活動を経て、ジャンヌレ=ル・コルビュジエ は、もともと手がけていた建築へと軸足を移し、「サヴォワ邸」など彼の、いや20世紀建築の代表作をつくり上げていく。

「サヴォア邸」1_100模型 紙谷譲 大成建設株式会社

 ではピュリスム絵画に打ち込んだ時期は、コルビュジエのモラトリアムまたは回り道だったのかといえば、そうではない。ピュリスムの活動を通して得た感覚や理論が、のちの彼の建築にそのまま流れ込んでいるのであって、ピュリスムがあってこそコルビュジエ建築は生まれたと、今展を観ると実感できる。

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国立西洋美術館内観

 機能性と合理性を追求した、しかしそれは人間やその身体への深い考察から端を発している表現。ジャンヌレの絵画とコルビュジエの建築は、当然ながら同じ特長を有していて、どちらも観て触れる側の者の奥深いところを揺さぶる強い力があるのだ。