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最高の邦題は「死霊のはらわた」? 映画の邦題ダサすぎる問題を考えてみた

映画ファンは映画周辺までもを愛してしまうもの

2019/03/03
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 映画関係のライターをしているとよく聞かれる質問の中に“吹き替えにタレントさん使うのどう思います?”“邦題とか宣伝コピーが原題とはなれすぎてませんか?”があります。

 今回も文春オンラインさんから同様の質問をいただいたので、いくつかの映画宣伝にも関わっていた身として僕がはたからみてて思う、洋画の吹替、宣伝、邦題事情について書いてみました。

洋画から邦画へ 90年代に起きた地殻変動

 まず前提として、90年代ごろは洋画=ハリウッド映画が日本でも強かったのですが、2000年代に入って邦画、それもTV局さん製作の映画が人気になってきます。

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 個人的には『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)の大ヒットあたりから流れが変わったような気がします。あの映画は10代に支持されたと言われていますが、10代のころの映画経験というのは、その後の映画の嗜好性に大きく影響すると思うので、ハリウッドのドンパチより、身近な世界の、泣ける映画みたいなものを好きな若者が増えた、ということでしょうか。

映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の完成会見 ©時事通信社

 こうした映画は出演タレントさんを、TV局の番組に出したりしてPRが十分できる。また、観客のほうも日ごろTV等で見ている俳優さんが出ている映画の方が安心する、みたいな方が増えてきたわけです。

 またこの時期、シネコンが沢山できたから“日常のちょっとした延長で映画を楽しむ”という風潮ができました。たとえば、映画といえば銀座で観るものという時代がかつてありました。つまり映画館に行くというのは、それだけ特別なもので、繁華街にわざわざ観に行くものだったのです。

 しかし、シネコンはつっかけで観に行ける気安さがある。都心の百貨店に行く、よりも近くのスーパーに行くぐらいの気持ちでのぞむことができる映画との接点が生まれたのです。

邦画のPR手法に、洋画が乗っかった

 こうした邦画のPR手法に、洋画として対抗すべく“邦画っぽい売り方を洋画でもできないか”ということで、いわゆる日本のタレントさんを使った吹替や彼らを宣伝大使的に使う方法が生まれたようです。こうすれば日本のTVでよくみるタレントさんを、洋画の顔としても使えるわけですから。

 「いや、でも邦画と洋画はそもそもターゲットが違うでしょう」という気もするのですが、意外にそうでもなかったりする。例えば本当にライトな映画ファンというか、たまには映画館でも行こうか、という人は、せっかくだから“いま話題になっている映画”を観ようとします。そうなると、たとえば昨年の6 月だと『万引き家族』と『デッドプール2』がお客さんを取り合ったりするものなのです。


 こうした背景があるので、邦画のPRに対抗するために洋画会社さんも日本のタレントさんを使った“吹替・宣伝大使”作戦をするわけです。

 ただし、“吹替”については、昨今、話題をとれる吹替キャストとファンが納得する吹替キャストをちゃんと使い分けている映画が多いと思います。

 最近の『トランスフォーマー』の映画版は、主人公のオプティマス(アニメでいうとコンボイですね)には、アニメ版と同じでファン納得の玄田哲章さんを使い、ヒロイン役にはPR効果を狙って人気女優さんを使っています。『ドクター・ストレンジ』も人気女優さんを声優に起用しながらも、敵を演じたマッツ・ミケルセンの声はマッツといえばこの人!の井上和彦さんでした。