大きな話題やニュースがあると新聞のコラムではどう料理されるか? それも楽しみの一つだ。諧謔や皮肉、意外な切り口のほうが本質らしきものがみえてくる場合があるからだ。

 最近では日本経済新聞の一面コラム「春秋」(2月22日)。

《日本で一番早く「週刊プロレス」が売り切れるのは東京・霞ケ関の地下鉄駅売店。それは官僚に隠れプロレスファンが多いからだ。そんな話を昔聞いたことがある。》

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東京メトロ・霞ケ関駅 ©iStock.com

 なぜ官僚にはプロレスの隠れファンが多いのか。

《規則、規制の世界に生きるだけに、反則攻撃さえ認められる「何でもあり」の空間で閉塞感から解き放たれ、喝采を送るのだとする解説も、妙に納得できた。》

 なるほど。この日のテーマが「最近の官僚」であることがわかる。昨年の文書改ざん発覚から統計不正まで「ミスにごまかしに忖度」。

 いま、「反則だらけ」は一体どちらの世界なのか? 読み手はヒヤッとする。

悪役のほうが正しく見え、反則はリング外にある

 そういえば先日、日本で最も有名な悪役レスラーであるアブドーラ・ザ・ブッチャーの引退式がおこなわれた。

 最後にブッチャーは観客への挨拶で何と言ったか?

「親を大事にしろ」

 であった(東スポ2月21日付)。

アブドーラ・ザ・ブッチャー(1987年、全日本プロレス) ©AFLO

「若い人たちにどうしても言いたいことがある。自分の親が老いたとき、老人ホームにぶち込んで放置するのだけはやめろ。お前らもいつか同じように年を取るんだ。自分の親を大事にすることを忘れるな」(東スポ・同)

 最後に親孝行を説く最凶レスラー。悪役のほうが正しく見え、反則はリング外にある2019年。