一貫する“土台作り”発言から見えるもの
ドラフト指名からこれまで、多くの場で根尾は発言を求められてきた。特に「1年目の目標」はほとんどの場で聞かれたと思うが、毎回判を押すように答えるのが下記の言葉だ。
“土台作り”
周囲は開幕スタメン、遊撃手のレギュラー獲得を期待して囃し立てるが、本人は一貫して色紙にその4文字を書き込む。コメントを求められても「プロ野球の世界では1年目なので、土台作りの年として経験を積ませていただきたい」と地に足が着いた発言に終始する。なぜ、一貫して“土台作り”の姿勢を崩さないのか。
『思考の整理学』には「しゃべる」という項目がある。以下、本文より引用。
いい考えが得られたら、めったなことで口にしてはいけない。ひとりであたためて、寝させておいて、純化を待つのが賢明である。そのことを知らないで、ひどい目にあったものがどれだけあるか知れない。(p156)
“土台作り”は長い時間をかけて出した結論だったのではないか。時間をかけているからこそ、ブレることなく純化している。
根尾が現在、本当に感じていることは、カメラの前では口にせず、自分にしか見えないところにしたためているのではないか。そして、然るべきタイミングで口にする。もしくはユニホームを脱ぐまで他言しないか、だ。
右ふくらはぎ肉離れを発症した影響で、春季キャンプは2軍で過ごす毎日。これも前向きに捉えれば“土台作り”を徹底的に行う良い機会だ。
荒木コーチという「触媒」
春季キャンプ第1クール終了後の一問一答。根尾は収穫についてこう答えた。
「実際に荒木さんに受けていただいたり、(守備の)形として見せていただいたりして、実際に見ることができたのは一番の収穫かなと思っています」
荒木さんとは、荒木雅博2軍守備走塁コーチ。黄金期の名セカンドとして鳴らし、昨季限りで現役引退。根尾も少年期の憧れに荒木の名をたびたび挙げている。その憧れの選手の守備を目の当たりにすれば、感激もするだろうし、何より同じ内野手として学ぶところは多いのではないか。
『思考の整理学』には「触媒」という項目がある。以下、本文より引用。
すぐれた触媒ならば、とくに結びつけようとしなくとも、自然に、既存のもの同士が化合する。それは一見、インスピレーションのように見えるかもしれない。しかし、まったく何もないところにインスピレーションがおこるとは考えられない。さまざまな知識や経験や感情がすでに存在する。そこへひとりの人間の個性が入って行く。すると、知識と知識、あるいは、感情と感情とが結合して、新しい知識、新しい感情を生み出す。(p57)
もちろん、根尾の中にも高校までに培った技術があった。ただ、遊撃手としての歴史が長くないゆえ、運動能力に頼った守備が多いという指摘もされていた。そこにプロで一流を極めた荒木コーチのエッセンスを取り入れることができれば、間違いなく成長につながる。
もっとも、キャンプでは“ケガの功名”と言わんばかりに、荒木コーチらに守備の基本を徹底的に叩き込まれているよう。持ち前の地肩の強さに、基本に基づいた動きが固まれば、名手への道は開く。
【参考】
「寝させる」の参考記事
https://www.nikkansports.com/baseball/news/201811050000026.html
https://www.nikkansports.com/baseball/column/techo/news/201901090000107.html
「朝飯前」の参考記事
https://radichubu.jp/dradama-king/contents/id=22770
「触媒」の参考記事
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190205-00000139-sph-base
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190211-00000005-sasahi-base
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190217-70000842-nksports-base
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190219-00020980-tokaiv-base
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