そこに身を置いているだけで気分が浮き立つような空間が、東京・六本木の森美術館で味わえる。現在開催中の「六本木クロッシング2019展:つないでみる」だ。

 同館が3 年に1 度開催しているグループ展で、日本の現代アートの現在形を示そうとするもの。今回は1970〜80年代生まれを中心としたアーティスト25組の作品が、広い会場に所狭しと並んだ。

今津 景
《ロングタームメモリー》
2018年
Courtesy:ANOMALY, Tokyo
展示風景:「六本木クロッシング2019展:つないでみる」森美術館(東京)
撮影:木奥惠三
画像提供:森美術館

入り口を塞ぐように置かれた巨大な猫

 これほど大規模なグループ展になると、その場はさぞ混沌とした雰囲気になるだろうとまずは予想してしまう。各アーティストが「我こそは」と力作を出品し、強くアピールをしてくるはずだから、ほうぼうでぶつかり合いが起きそうなものだ。

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 でも今展には、そんな印象がまったくない。きわめて整然としていて、かつ華やか。展示構成を考えたキュレーター陣が、高い編集能力を発揮した成果だろう。と同時に、まじめでお行儀のいい作品ばかりが集まっていて、毒気が足りないのかなという気も少々してしまうのだけれど。

飯川雄大
《デコレータークラブ―ピンクの猫の小林さん―》
2019年
展示風景:「六本木クロッシング2019展:つないでみる」森美術館(東京)
撮影:木奥惠三
画像提供:森美術館

 とはいえ、会場へ赴くとのっけから驚かされるのもまたたしか。入口を塞いでしまわんとする勢いで、巨大なピンク色をした猫型のオブジェが置かれているのだ。展示スペースにむりやり押し込められて、ちょっと窮屈そうな趣を見せるのは、飯川雄大《デコレータークラブ―ピンクの猫の小林さん―》。

 いったいこれは何なのか? びっくりするし、よく見るとかわいいし、色合いもよく目立つから、ふだんならそういうものに出くわせば、真っ先にスマホを取り出し写真を撮っておきたくなる。この作品も撮影可なので、存分に撮ってインスタグラムにでもアップしてみんなとシェアすればいいのだが、ひとつ問題が。実物を前にしたときのインパクトが、スマホで撮影した画像ではどうにもうまく表現できないのだ。

 画面に全体がうまく収まらないし、特殊な蛍光ピンクで塗られているというボディの色も画像になると忠実に再現されない。何枚撮っても、「あれ、イマイチ迫力不足……」となってしまう。