2月に札幌で行われた日本カーリング選手権大会。本命視されていたのは平昌五輪銅メダリストチームのロコ・ソラーレだったが、予選リーグ、プレーオフ、決勝戦と3度にわたって中部電力と対戦した。勝利を収めたのはいずれも中部電力で、とりわけ決勝戦は11-3という大差のゲームとなった。結果、中部電力は10戦10勝で通算6度目の優勝を飾り、「世界行き」の切符を手にした。
3月16日、カーリング世界選手権がデンマーク・シルケボーにて開幕する。
最後に投げるフォースは得点に直結するポジション
「確かに調子いいですね。あの人、練習嫌いなんですけどね」
チーム最年少で新スキップの中嶋星奈は小首を傾げ、笑いながらチームのフィニッシャーである北澤育恵について言い放った。昨年の夏のことだ。
中部電力はワールドカーリングツアーの国内タイトル「どうぎんカーリングクラシック」に出場していた。平昌五輪というマイルストーンは過去のものになり、チームは次の4年、北京五輪を目指し、そこで勝てるチームに強化すべく、新しい布陣を模索している過程だった。
創部からの唯一のオリジナルメンバーで、昨季まで主将としてチームを牽引していた清水絵美をマネージャー兼フィフス(控え選手)としてコーチボックスに置く。
安定したショットとスイープが求められるリードに石郷岡葉純、チーム最年少の中嶋をセカンドの投げ順ながら司令塔・スキップに抜擢し、スイープとショットでリスク管理をする攻守のスイッチャーとして松村千秋をサードに。そして得点に直結するポジション、最後に投げるフォースを北澤に任せた。
スキップとフォースの役割分担を明確にした
カーリングはこれまで、多くのチームが司令塔であるスキップと、フィニッシャーであるフォースの役割を兼ねる布陣を敷いてきた。例えば、平昌五輪のカーリング女子上位4チーム、スウェーデン、韓国、イギリス、そして日本代表ロコ・ソラーレの藤澤五月もスキップでありフォースである。
しかし、中部電力はスキップとフォースの役割分担を明確にすることで、フォース・北澤に自身のショットに集中させる選択をした。世界のトップもいくつかのチームが採用しているこのスタイルと、ジュニア時代から北澤をよく知る中嶋をハウスに立たせ、北澤のショットを最大限に引き出そうとしたチームの思惑がハマった。その並びで同大会に挑むと、予選からショットが繋がり、初の決勝進出を果たす。
特にテイクを中心に、好ショットを連発していた北澤のパフォーマンスは出色だった。それについて、「北澤選手、決まってるね」と中嶋に声をかけると、彼女は冒頭のセリフを発したのだった。