この展覧会を機に、日本での彼らの人気がぐっと高まるんじゃなかろうか。東京丸の内、三菱一号館美術館での「ラファエル前派の軌跡展」だ。
ラファエル前派とは、美術史上で最初に生まれた前衛芸術家集団の名称。著名な美術の流派といえば、まずは19世紀後半の印象派が思い浮かぶところ。けれどラファエル前派は、それに先んじる19世紀半ば、すでに結成されていた。印象派の前に、彼らがいたのである。
中世に立ち返って、絵画の進むべき道を模索した
ラファエル前派が生まれたのは英国でのこと。当時の英国美術界を取り仕切っていたのは、アカデミーと呼ばれる権威的かつ伝統重視の勢力だった。
凝り固まった世界に反発し、叛旗を翻すのは若い世代の特権だと考えたのかどうか。絵画について先鋭的な考えを抱いていた若者たち、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティらは、それぞれのアトリエを行き来しながら、自分たちが信じる芸術を推し進めた。
そうして1848年、総勢7人の仲間たちが「ラファエル前派同盟」を結成した。「ラファエル」とは「ラファエロ」の英語読み。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並び称されるかのルネサンスの巨匠、ラファエロのことだ。ミレイら若き芸術家たちは、現在の美術は範にならないと見なし、ラファエロ以前、つまりは中世のころの絵画を目指すべきとの主張を展開したのだった。