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型に嵌まった様式美に反発したから、作風には幅が

 メンバーたちは流派の実践として、各々が作品を発表していく。ロセッティは妖艶かつ生々しく女性像を描き、ミレイは風景と人物が溶け込むような調和の美を画面内に実現した。

ジョン・エヴァレット・ミレイ《滝》1853年、油彩/板、23.7×33.5 cm、デラウェア美術館、サミュエル&メアリ・R・バンクロフト・メモリアル、1935年
©Delaware Art Museum, Samuel and Mary R. Bancroft Memorial, 1935
 
フレデリック・レイトン《母と子(サクランボ)》1864-65年頃、油彩/カンヴァス、48.2×82 cm、
ブラックバーン美術館
©Blackburn Museum and Art Gallery
エドワード・バーン=ジョーンズ《赦しの樹》1881-82年、油彩/カンヴァス、186×111 cm、リヴァプール国立美術館、レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー
©National Museums Liverpool, Lady Lever Art Gallery

 同時に、グループとしての共通点を見出すことも可能だ。絵画上の決まりごとにこだわらず、外界をよく観察することから始めているから、描写が丁寧かつ精細である。描く題材を神話や歴史から引っ張ってくるのは伝統絵画と似ているけれど、解釈がかなり自由で、そこに画家のオリジナリティがよく出ている。個人の考えを絵画に反映するので、画面から感情がはっきり読み取れて物語性も豊か、などなど。

 彼らの後続世代は、印象派も含めてどんどん作風が多彩になっていくのだけれど、それら発想の源泉にはラファエル前派の影響が見え隠れする。それら近現代絵画の「芽」を作品から探してみるのも、今展のよき愉しみ方だろう。