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戦力外から育成契約へ ホークスの“ス-パーポジティブマン”古澤勝吾が歩む道

文春野球コラム オープン戦2019

2019/03/17
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「よっしゃー! やったりますよ!」

 私はこの人の口癖が好きです。“ス-パーポジティブマン”こと古澤勝吾選手です。

 私は彼が2年目の時からホークスのファームを取材していますが、これまで落ち込んでいる姿を見たことがありません。ともに寮生活を送る同期の選手たちも古澤選手は「いつもあのまんま」だといいます。側で見ていると好不調の波に苦しんだり、悔しさから感情的になる選手も多い中、常に前向きで明るくてまっすぐな人です。

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 そんなスーパーポジティブマンは、昨年10月に戦力外通告を受けました。

 育成選手としてホークスには残れましたが、さすがの古澤選手でも……と心配しました。だけど、「野球が終わったわけじゃないんで、また支配下戻れるように頑張ります! よっしゃー! やったりますよ!」と落ち込む様子は全くなし! しっかり前を向いていました。

 まっすぐで一生懸命な姿を見ると、こちらの方が元気をもらいます。自分に子供が出来たら、こんな子に育ってほしいなぁ……なんて思っちゃいます(笑)。そんな人だから本当に頑張ってほしいし、活躍してほしいと心から願いながら私も日々取材をしています。

ファームで今年注目の古澤勝吾 ©上杉あずさ

春季キャンプで巡ってきた“大役”

 背番号124になって迎えた2019年シーズンですが、古澤選手の“スタート奪Sh!”は良好に見えます。

「お前しかおらんやろー!」

 先月の春季キャンプ。B組打ち上げの時、ベテラン長谷川勇也選手からそう言われて手締めの声出し係に指名されたのは古澤選手でした。通常、手締めは年上の選手が行うのです。

 キャンプ中1日1000スイングも振り抜いた己に厳しい先輩に、「若い選手に負けるとはさらさら思ってない」「意識の高い(若手)選手がいない」と後輩にも厳しい先輩に、「一番頑張ってた」と言われて巡ってきた“大役”でした。

「頑張ってる気持ちを伝えろ」

 驚きと照れもありましたが、自らの手締めで春季キャンプを終え、充実感もこれからへの責任感もより一層増しました。

 良いスタートダッシュを決められたのも、やはり支配下選手から育成選手になって挑む今年にかける思いがあってのことでしょう。古澤選手の頑張りを誰もがそう感じていましたし、私もそう思って、想いを聞いてみると……。

「いや、そういうわけじゃないんですけど(ニッコリ)」

 そういうわけじゃないんかーい!(笑) 思わずズッコケそうになりましたが、古澤選手は「みんな育成になったから頑張ってるみたいに言うけど、いつも通りの『よっしゃー! やったるぞ!』って気持ちなんですよね」と本当にいつもと変わらぬ屈託のない笑顔で首を傾げました。

 でも、私には今までの古澤選手とはどこか違って見えるのです。

 昨季から3軍で指導する吉本亮打撃コーチにそのことを話してみると、「勝吾の練習に対する取り組みはずっと良いよ」と本人同様、一生懸命取り組んできた今までの姿から大きな変化はないといいました。「ただ、前より自分でやりたい練習ができるようになったし、ちゃんと理解して練習に取り組めていると思う。そこじゃないかな」と内面的な成長を認めていました。取り組む姿勢自体は変わっていなくても、頭の中が整理された上で取り組めているようです。きっと長谷川勇選手にもその感じが伝わったのでしょう。吉本コーチは「今年は状態も良いし、去年までと見栄えが違う」とも話し、古澤選手の更なる成長に期待を寄せていました。

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