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手に取った読者は女性が8割

 本書は12月20日に初版5万部でスタートしたが、全国の各書店でたちまち売切れ。急ぎ重版をかけた7万部が仕上がったのはクリスマスの後。年末とあって通常の流通ルートでは輸送が間に合わず、一部では宅配便や、営業部員が直接書店に持ち込むなど異例の体制で出荷されて行った。

 発売日にTBS「ビビット」で紹介された他、年末にかけてNHK「ニュース7」など多くのテレビ番組が2018年の振り返り番組のなかで本書を紹介しながら樹木希林さんの人柄を偲んだことも大きな後押しとなった。ただし、実際に売上げ部数が大きく膨らんだのは、年が明けて追加の重版が続々と書店に届き始めてからということになる。

 書店店頭での売場は拡張され、衰えない勢いに押されるように、重版が週1ペースで続いていった。

 出版取次大手の出版取次大手の日販の調査では、購入者の約25%が60代女性。次いで70代、50代、40代の女性が多く、女性の割合が8割近くとなっている。

 通常、これほどのベストセラーになれば年齢性別の差は徐々に緩やかになってもよさそうなものだが、発売当初から現在までほぼ変わらないことも特徴的。ベストセラーだから買うのではなく、樹木希林さんのメッセージに共感した人たちが買っているのだろう。

 大型書店の売上げ規模はもちろん大きいが、全国各地の街の小さな書店での売上げが積み上がり、大きな部数となっている。

日販WIN+調べ

 本を買ったのは、必ずしも、樹木希林さんのファンばかりではない。

私は樹木希林という女優は嫌いでした。でも彼女は「面白がって」やっていたんだ。ここ数年、彼女の発する言葉、行動が私の胸に響く。うそのない、飾らないことが私をひきつけてしまう。(71歳 女性)

この本を読んで自分もガンを経験し、これからの生き方等を意識しながら送らねばということを感じている。希林さんのこと「変わった人だなあ」から、「自分をシッカリ持ち生き方を私達に教えてくれた人」に変わって行った。(71歳 女性)

体裁を取り繕わない等身大のアドバイス

 樹木希林さんが全身がんであることを公表したのは70歳の時。2013年に行われた、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞の受賞スピーチだった。病と向き合って前向きに生きた樹木希林さんの姿勢に力づけられた人も多い。

2年前にがん手術を受けたが、転移とか再発におびえる毎日であった。しかしこの本を読んで自分の生き方を変えてみようと改めて思った。(71歳 女性)

私も母をガンで亡くしました。精神的にも追い詰められ家事も子供たちの事も満足にできませんでした。余命宣告を受けテレビ等で公表される樹木さんは立派でした。自分を見つめて他人にも厳しく本質をスバッと解く言葉にひかれます。哲学書です。(64歳 女性)

私は希林さんと同年。また膵癌グレーのまま2年過ぎています。「しっかり傷ついたりヘコんだりすれば、自分の足しや幅になる」。この言葉に力をもらえている。(年齢不詳 女性)

私ががんになった時は、こんな風に思って生きて行こうと思った。今は2人に1人ががんになる時代だから。(53歳 女性)

 厚生労働省の発表によれば、2017年の日本人の平均寿命は、女性が87.26歳で世界第2位、男性が81.09歳で世界3位だという。長寿社会の到来はめでたいが、一方で必ずしも幸福な老後を保証するものではなかった。年金、老後の資金、相続、墓、など様々な課題がのしかかっている。