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「一番トクしたなと思うのは、不細工だったこと」
しかし、「求めすぎない」「人生なんて自分の思い描いた通りにならなくて当たり前」「死を感じられる現実を生きられるというのは、ありがたいものですね」といった樹木希林さんのことばは、お金持ちでなくとも、病を抱えていても、心持ちひとつで残り少ない人生を豊かに生きることが出来ると教えてくれる。
かつて『寺内貫太郎一家』や『夢千代日記』などのドラマでお茶の間に親しまれ、近年は『万引き家族』『日日是好日』などの映画で演技派女優の個性を輝かせた樹木希林さん。
「自分で一番トクしたなと思うのはね、不器量と言うか、不細工だったことなんですよ」と言い、夫である内田裕也さんとの関係を「内田とのすさまじい戦いは、でも私には必要な戦いだった」と言って、体裁を繕うところがない。だからこそ、等身大のアドバイスとして受け取られているのだろう。
樹木希林さんは、「お互いに中毒なんです。主人は私に、私は主人に」と語っていたが、夫の内田さんは3月17日に、妻の後を追うように逝去。まさに、そのような関係だったのだろう。
担当編集者の石橋は、本書の冒頭でこう書いた。
「語り口は平明で、いつもユーモアを添えることを忘れないのですが、じつはとても深い。そして何よりも、ポジティブです。彼女の語ることが説得力をもって私たちに迫るのは、浮いたような借り物は一つもないからで、それぞれのことばが樹木さんの生き方そのものであったからではないでしょうか」