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お互いに中毒なんです。主人は私に、私は主人に

(主人は)なかなか出会える人ではありません。向こうも、これだけ、へこたれない女はいないって。お互いに中毒なんです。主人は私に、私は主人に。だから、別れられないんです。

 でもね、娘がね、主人と女優がハワイで写ってる写真を見て、「……こういうの、いやじゃない?……」って声をたてずにハラハラと泣いたんです、ほんの一分。そしてスッと「ごはん食べよ」って言いましたけど……。私じっと見てました。うまく言えないけど、思わず私、この娘(こ)の感性と将来性に期待しましたね。

 私が人間としても、役者としても欠けてる──それがこれなんです。主人がね、「いい子に育ってるなあ」って会う度に言いますけど、その意味が解りましたね、この時ばかりは。私ね、ずーっと毒ばらまいてきましたから評判が悪いんです。主人はいつもハラハラしてて、で、どっかで悪口を聞くと体張ってケンカしてくるんです。よく「俺はお前をフォローするんでくたびれはてる」って。ちょっとフォローの仕方が、並はずれてるんですけど。

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(「男と『感応』しあえる生き方とは」1988年11月)

 

あたしだって面倒くさいから独りで逝きたいわよね

 娘にはね、お母さんが先に死んでお父さんが残ると困ることがたくさん出てくる、って心配があるんですよ。そしたら占いの人に「大丈夫です。お母さんはつまんないことでちょっと転んで、あれ、起き上がらないなと思って見てみたら死んでるとか、そういう簡単な死に方をします」って言われたらしいの。それで時々電話して「生きてる?」って聞いた方がいいって。

 そしてね、こうも言われたらしいのよ。「お母さんが死ぬときには即座にお父さんの襟首つかまえて逝くから大丈夫よ」って。あっははは。だからね、その話をあたしが内田さんに喋ったの。そしたら「頼むから独りで逝ってくれ」って。あたしだって面倒くさいから独りで逝きたいわよね。でも占い師がそう言うんだもん。可笑しいったらありゃしないわね。ま、そんなふうに面白がってますから、あたしたち。

(「『全身がん』を告白した『樹木希林』インタビュー」2013年3月)