「大リーグ先輩」から「日ハム後輩」が学んだこと
「日ハムが大リーグと試合する」とどうなるのか。まず17日、第1戦のインパクトが大きかった。アスレチックスが「ブルペンデー」を仕掛けてきたのだ。これは先発投手が弱いチームが始めたユニークな投手起用だ。リリーフ投手が短いイニングをつないでいく。この日、アスレチックスは先発リアム・ヘンドリックス以降、1イニングずつ小刻みに継投し(唯一、6番手のヤスメイロ・ペティットだけが2イニング登板した)何と8人のリレーでファイターズ打線を1失点に抑え込む。なかにはフェルナンド・ロドニー、ホアキム・ソリアと、ビッグネームも入っていた。
僕の記憶では1970年代の金やんロッテが(確かオールスター休みに入る前半戦最後の試合で)1イニングずつ9人のリレーを実施したことがある。これは相手打線も目先が変わって幻惑されてしまい、すごく面白かったのだ。ただ「ブルペンデー」とは発想が違って、村田兆治らローテーション投手も含めた総動員だったと思う。
開幕3日前の、仕上がった状態の「MLBのブルペンデー」を直接体験できたことは大収穫である。おお、こういう感じなのか。ファイターズは今年、「オープナー」「ショートスターター」や「ブルペンデー」といった新しい投手起用法を採り入れるという噂だ。僕はアスレチックスのリリーフの層の厚さに舌を巻いた。こんなに強いブルペンなのか。個々にタイプは異なるが、150キロ台のパワーピッチャーが多い。しかも、そのスピードでボールを動かしてくる。ファイターズもこんなの組みたいなぁ。で、確信を持った。栗山英樹監督はこれ絶対やると思うな。
「オープナー」起用でスポーツ紙に名前が上がってるのは金子弌大と斎藤佑樹だ。第1戦では金子弌大が4回無失点、9奪三振とすば抜けた投球をした。完全に復調していてエースローテでも十分回せそうだが、短いイニングを使ってもご覧の通りだ。
斎藤佑樹は第2戦の先発だった。今年は非常に順調で、2、3イニング(打者1巡)を抑えてもらう「ショートスターター」起用が現実的になってきた。アスレチックス戦はスティーブン・ピスコッティに一発を浴びるが、2回を投げてその1失点だけにまとめる。
つまり、第2戦はファイターズが「仮想ブルペンデー(正確には仮想ショートスターターデー?)」だった。斎藤佑樹の後、井口和朋、加藤貴之、秋吉亮、宮西尚生、浦野博司とこちらも小刻みにリレー、中島卓也のスクイズで勝ち越し(!)、王柏融、横尾俊建のタイムリーで4点リードした状態で、9回、クローザーの石川直也につないだのだ。
いやぁ、面白かった。こう、何というか「大リーグ先輩」と「日ハム後輩」が1、2戦でコール&レスポンスだ。「ブルペンデーな、こうこうこうやるんよ」「あ、こうこうこうですか」的な応酬。バッチリ決まれば大リーグ道場免許皆伝の運びだった。が、ご存知の通り、石川直がクリス・デービスに3ランを浴びるなどして、4点差をフイにしてしまう。あぁ、「ブルペンデー」の直伝は幻に終わったか。
ま、開幕前、相手も違う、審判もストライクゾーンも違う試合で石川直が抑えに失敗したからって、ガタガタ騒ぐことはない。プレシーズンゲームでよかったじゃないか。今年は石川直にはセーブ王になってもらうつもりだ。勉強になったでいいでしょう。ア・リーグのホームラン王に一発食らったなんて勲章だよ。
が、石川直に限らず、もっと出てくる投手に威圧感が欲しいと思った。問答無用で1イニング投げて帰っちゃう感じだな。ブルペンはもっと強く出来る。「かわす」「ごまかす」じゃなく、戦うピッチングだなぁ。イメージ的には「山賊投手陣」くらいのやつを整備したい。何か夢がふくらむなぁ。
まぁ、守備やバッティングに関しても大いに思うところあったが、キリがないのでここでは扱わない。石川直が打たれて第2戦は6対6の引き分けだ。日ハムは大リーグに追いつかれ、追い越されそうなヤバさを感じたが、同点で試合を終えた。楽しくて学ぶところの多い2日間だった。
追記、本稿の校正日、イチロー選手が引退を発表しました。僕は午前1時過ぎまで及んだ記者会見をYouTube配信で見終えたところです。オリックス時代、セカンドの頭を越す弾丸ライナーの満塁ホームラン(!)を打たれたのを思い出します。こてんぱんにやられたなぁ。あの頃から長い年月にわたって、野球の夢を見せてもらいました。本当におつかれ様です。
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