「全打席本塁打狙い」のスタイルと「打率も残したい」という思い
山川は4月9日時点でリーグ2位の5本塁打を放った一方、打率は2割。「全打席本塁打狙い」と公言するホームランアーティストとしては悪くない出だしかもしれないが、「本当は打率も残したい」と昨年夏に話していた。だが、「打率を先に考えると、『ホームランを打てないんじゃないか』という怖さがどうしてもある」。だから現在の打撃スタイルを貫いているというのだ。
50発宣言をした今季、果たして前年の打率.281からどれだけ確率を高めることができるか。そうした観点から言うと、現在は本塁打こそ出ている一方、自分がやりたい打撃と微差があるから打率が上がってこないのだろうか。
「そう思うんだったら、そうじゃないですか」
うん、何か違いそうだ。
4月10日、楽天戦前の打撃練習を終え、三塁側ベンチの通路から引き上げる山川の隣を歩きながら1分ほど質問を続け、気づけばロッカールームの扉の前に来ていた。最後に何の質問をしようか。頭を巡らせていると、山賊打線のドンは自ら口を開いた。
「とりあえずまだ10試合なので、見といてください」
結果が出るまで、多くを語らないのが山川という男だ。
4月10日の楽天戦は5打席で2四球&1死球、2三振。相手のマークはかなり厳しく、リーグ35位(規定打席到達者は41人)の打率.190に沈んだ。
春になれば必ず美しい花を咲かせる桜と違い、打者の開花はいつになるかわからない。4月頭に「いい感じになりそう」と話していた山川だが、その予感は外れた。見ている側としても、つくづく野球は難しいスポーツだと感じる。
ただし状態を上げようとしている山川の姿にこそ、細かく描写する価値があるように感じる。本人にとって決して思うような結果が出なくても、ファウルや見逃し方にも「あっ」というシーンがあるからだ。
もちろん筆者もプロのライターであり、本塁打ではなくファウルや見逃し方、その裏にある心理状態に焦点を当てるのは、いささかマニアックすぎると思わなくもない。読者の需要がなければ、書いても仕方ないのは当然だ。そのジャッジメントとして、文春野球ほど格好の舞台はないだろう。
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