“ある予兆”は、女の側に示されていることがある
女子会などでも話題になるそういった複雑で個性的で、大変デリケートな女心に敏感な男性は少なく、何が許されて何が許されないのかイマイチ飲み込めないままに羽目を外して、自分が想定した以上の大きなトラブルを巻き起こす人は多い。正直、そういった計らいができない人に不倫の資格などないと言ってもいい。相手の都合と自分の願望の折り合いが悪い時に、なんとか小さな隙間を見つけてすれすれのバランスを取るのであれば、その想像力と、コミュニケーションを惜しまない努力は不可欠だからだ。
これはある意味、間に入る男の問題であって、浮気相手、愛人となる側には防ぎようのないことのようにも見える。妻の属性や性格を知らないし、男性と妻がどの程度思いやりのあるコミュニケーションをとっているかどうかも知らない。そもそも、知ったところで自分の容姿や年齢、属性を変えることは不可能だ。
ただ、不倫関係を長く続けている者、短期間の浮気で家庭を壊してしまった者、大きなトラブルを呼んだ者の話の中には、妻の最も触れられたくない種類の不倫、という概念が影響していることはあるし、実はその予兆は、女の側に示されていることがある。
SNS経由で、妻から浮気相手に送られたメッセージ
例えば浮気が原因で離婚し、その後しばらく浮気相手であった女と恋愛関係を続けたものの、今はそちらとも破局した男性は、専業主婦であった前妻にとって、彼と同じような高給の取れる専門職である浮気相手の属性が、普通以上に気に障ったのだろうということを、最近になって上司の指摘により気づいた、と言う。
それもまた彼の事後的な想像でしかないが、彼はまだ不倫関係だった時に、浮気相手に自分の妻の愚痴を頻繁にこぼすタイプであった。当然、愚痴の中に含まれる情報から、愛人側はある程度の妻に関する情報、性格や経歴などを知ることができた。彼の浮気が妻の知るところになったのは、長い不信によって携帯電話やSNSをチェックされたことだが、トラブル発覚時にSNS経由で妻から浮気相手に向けてメッセージが送られたことがある。その時、彼の離婚と自分との再婚を希望していた彼の愛人は、自分が彼と同じ職業であることなどを強調して対応した。
その対応の中には、浮気相手の妻の属性への蔑視や逆恨みによる見下しがあったのは確かだが、わざわざそういったことをしたのは、その事実が妻に対して持つ攻撃性に自覚的だったからとも考えられる。男よりも、浮気相手の方が妻の心境に対して想像がついていたのだとしたら、家庭を壊すつもりの彼女にとっては好材料であっただろう。逆に言えば、家庭を壊すような関係を望んでいない女性だったら、もっと相手を傷つけない行動を選択できたと言うことだ。男性を介して繋がる見ず知らずの女同士の方が、間に入ってどちらとも関係を持っている男性よりも、良くも悪くも相手の気持ちがわかる、といったことは結構な確率で起こりうる。
20代後半から30代半ばにかけて長く既婚者との恋愛を経験したとある女性は、こんなことを言った。「奥さんや家庭について何の知識もなくても、自分のことを愛している男をよく冷静に観察して、思考回路を想像すると、奥さんが自分との関係を知った時に許すかどうかはわかる」。つまりは、日頃から相手の気持ちに想像力を働かせるような男性でなければ、タブーを犯している危険性がある、と言う意味だったのだと思う。