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まるでイチローのよう 子供たちに「夢」を与えた瞬間

 このインタビューの2日後、京セラドーム大阪での試合。オリックスの攻撃1死2、3塁のピンチの場面、マレーロ選手の打球は辰己選手が守るライト方向へ。浅くはない、むしろ犠牲フライには十分な飛距離だった。辰己選手は捕球し、すぐさま1バウンドでバックホームはストライク返球。見事に3塁ランナーの吉田正尚選手をレーザービームで補殺! 鮮やかなプレーだった。

矢のようなホームへの好返球でランナーを刺す辰己選手 ©RakutenEagles

 1996年、辰己選手は神戸で生まれた。その年、オリックスはパ・リーグ2連覇を果たし、19年ぶりの日本一に輝いて、前年度に成しえなかった「神戸での胴上げ」を実現させた。しかもイチロー選手は3年連続となるシーズンMVPを掴んだ96年である。

 イチロー氏が引退した2019年に、神戸出身のルーキー辰己選手がオリックス相手に、まるでイチロー選手のような矢のような返球でピンチを乗り切った事実は、きっと偶然ではなく、必然なのだと思う。まさに試合を観ていた子供たちに「夢」を与えた瞬間だったに違いない。

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 そこで、ふと思い出したのは、あの新入団選手発表会見。「これからはプロ野球選手として、野球に専念できる環境になりましたので、大好きな野球に専念したい」という言葉があった。心から野球を愛している事が伝わってくる素敵な言葉だと思った。

 何ごとにも物怖じしないスタイルと、「尊敬しない理由がない」というイチロー氏から与えてもらった「夢」に向かって真っすぐ歩んでいく辰己選手から1日たりとも目が離せない。

 そしてルーキーイヤーの今シーズン、自身の目標の1つである「新人王」に輝くまでの過程を、辰己語録も期待しながら、走攻守三拍子そろった背番号「7」を追いかけていきたい。

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