男性同性愛に関わる遺伝子を残してくれる存在
研究は主に男性同性愛者についてなされているが、双子の一方が男性同性愛者なら他方はどうか(一卵性双生児と二卵性双生児の比較)、二人とも同性愛者であるという兄弟を調べ、同性愛遺伝子のありかを探る、子を残しにくいのにどうやって同性愛遺伝子を絶やさないか、といった遺伝子からのアプローチによる研究。
さらには女性ホルモンに脳はどう反応するのか、脳の構造の特徴、男と女の性フェロモンにそれぞれ脳はどう興奮するか、といった脳やホルモン、フェロモンからのアプローチによる研究である。
近年、これでほぼ謎は解けたといってもよい研究も登場している。
それはあまりにも単純にして明快で、なぜこれまで誰一人として思いつかなかったのか不思議なくらいの結論である。ネタバレになるので詳しくは語らないが、男性同性愛者になり代わり、彼の遺伝子、特に男性同性愛に関わる遺伝子をよく残してくれる存在が一族の中にいるのだ。
フレディの音楽や人生にどんな影響を与えていたか
このようなリサーチの成果を、新刊『フレディ・マーキュリーの恋 性と心のパラドックス』として出した。実を言えば、この本は7年ほど前にやはり文春新書から出版された『同性愛の謎 なぜクラスに一人いるのか』の増補改訂版である。
『同性愛の謎』でも、フレディ・マーキュリーを初めとする、数々の天才的男性同性愛者たちのエピソードにも触れていたが、今回はフレディに視点を据え、バイセクシャルであり、ゲイでもあるという性的指向が、彼の音楽や人生にどう影響を与えているかという点、彼と恋人との関係などについて大幅に加筆した。
映画で彼を知り、好きになった人、彼の心の葛藤について深く知りたい人に特に読んでいただきたい。前著を読まれたかたでも、新たな展開を見せた研究や情報も盛り込んでいるため、決して損にはならないはずである。
そして何より、名曲、「ボヘミアン・ラプソディ」でなぜ彼が何度も「ママー」と呼びかけるのか。その答えがこの本にあるのである。