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1100万人フォロワーの「中国版ユーチューバー」がカルビー京都工場に来た理由

日本企業に求められる「爆売り」

2019/04/02
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「短期で結果を出さないといけない」市場にぴったり

 中国ではテレビよりもインフルエンサーが広告の中心になっているのか。

「何を宣伝するかによっても異なります。大まかな傾向でいえば、若者向け、低価格の商品ではネットの影響力が強く、インフルエンサーを活用した施策に適しているといえるでしょう。逆に衝動買いしづらいもの、色々と情報収集をしてから意思決定をする不動産や車などの高級商材では、インフルエンサーの起用だけではすべての課題を解決する事はできません。

 広告実務にたずさわっている立場からいうと、広告代理店として便利という側面もありますね。テレビ広告は全年齢層にリーチできる点で強いのですが、中国では日本ほど精密なターゲットの絞り込みやメディアプランニングができません。生き馬の目を抜く中国市場ではともかく短期で結果を出さないといけないので、クライアントにすぐ実績を示す、あるいは広告への反響からすぐに改善点を見つけることが必要です。インフルエンサーはどういうフォロワーを抱えているかという属性が明確ですし、必要な予算もフォロワー数や属性に応じて数限りない選択肢があり、反応も速い。スモールスタートで試してみてフォロワーの反応を見ながら追加の施策を検討するなど、状況に応じて柔軟に対応できるところはありがたいです」

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日本企業も「数百万円からスタートできる」

 中国で急成長を続けるインフルエンサーマーケティングは、日本企業にとっても大きな武器となっている。ある東証一部上場の化粧品メーカーの中国部門トップは、「広告費の過半数はインフルエンサーに投入している」と明かした。

 冒頭で紹介した密子君の動画は、越境EC大手のインアゴーラが仲介して実現した。費用は数百万円からスタートというが、広い中国全土でのキャンペーンや大々的なテレビ広告と比べると、小規模の予算からアプローチが可能となる。

 インアゴーラは今後も、中国の有力インフルエンサーを活用した日本企業紹介の仲介を続けていくという。インフルエンサーマーケティングは何もフォロワー数が多い人物を起用すれば成功するというものではない。自社製品と親和性の高いインフルエンサーを起用することが鍵となる。

「(目的に合致した)インフルエンサーを独力でみつけて、独力で交渉依頼するのは現実的になかなか難しいと、日本企業からは評価していただいております」とインアゴーラのPRディレクター、板野可奈子さんは説明する。

在日中国人インフルエンサー、林萍在日本さん。2018年3月、日本の百貨店に招かれて売り場からライブECを行った
林萍在日本さんのライブコマース、実際の映像