企業間のECサイトでもライブコマース
数あるサービスの中でも筆者が驚いたのが、アリババグループが展開するB2B(企業間)向けEC(電子商取引)サイト「1688ドットコム」だ。B2B向けとなると、お堅い作りのサイトを想像するが、ここにもライブコマース機能が実装されている。この商品の売りはどこにあるのか、何点以上買うとどれだけ割引きになるのか。工場内からスマホで放送し、視聴者の質問に答えていく。このライブコマースのターゲットはマイクロインフルエンサーやソーシャルバイヤーだ。動画で物を売っている人々が、さらに動画を見て仕入れる品を決めているわけだ。
なぜ中国でこれほどインフルエンサーの活用が進んだのか
中国のメディアに詳しく、株式会社デルフィスで中国でのデジタルキャンペーン企画・運営に携わる藤井直毅氏は、次のように説明する。
「日本や欧米でのインフルエンサーマーケティングの出発点は、『専門家や知見を持つ一般人に、自分たちの売りたいサービスや商品が実際に優れていると太鼓判を押してもらう事』で、金銭のやり取りを前提としていないという意味で、広告とはまったく別の性質のものでした。今は商業化が進み、いわゆる企業案件という広告も広く行われていますが、成り立ちの違いから既存の広告とは別の枠組みとなっています。しかし中国では、テレビや雑誌と同じ広告媒体の一つとして認知されています。なので、広告費を組む時には、テレビ、ラジオ、雑誌、インフルエンサーを含むウェブメディア……と予算ポートフォリオを構成します。広告主の立場からいえば、一般のウェブ広告とインフルエンサーは同じ広告という感覚で、広く普及しています」
なぜ、中国ではこれほどインフルエンサーの活用が進んだのだろうか。
「中国は2010年代に入り、モバイルインターネットが急速に成長しました。日本に比べてもスマホの保有率は高く、利用時間も長い。対照的に新聞や雑誌の影響力は落ちています。調査会社CTRのレポートによると、この10年で新聞の接触率は半分以下に、雑誌の購読率も7割以下に減少するなど、情報源はすっかりスマホにとって代わられた感があります。
また、モバイルファーストで世界の最先端を走る中国では、スマホはコンテンツを見るだけでなく、ECサイトでの買い物、ホテルやレストランを予約するといったことがとてつもなく便利にできます。その中でインフルエンサーも単純な広告塔としての役割を越えてスマホを通した様々なビジネスと結びつき、発展しました」