先日、第112回「歯科医師国家試験」の結果が発表されました。
同日に発表された医師国家試験の全体の合格率は89.0%と約9割。この割合は毎年変わりません。では、歯科医師国家試験の合格率はどれくらいでしょう。なんと63.7%。10人受けると3~4人落ちるという厳しさでした。
なぜ、医師の国家試験に比べ、歯科医師の国家試験はこんなにも厳しいのでしょうか。それは、歯医者さんが「多すぎる」とされているからです。
歯科医院はコンビニより多い?
2016年12月31日現在における全国の届け出「歯科医師数」は10万4533人。そのうち約85%にあたる8万9166人が診療所に勤務しており、5万9482人が「診療所の開設者又は法人の代表者」、すなわち歯科医院の院長や理事長を務めています(厚生労働省「平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査」より)。
これとよく比較されるのがコンビニの数で、同じ16年は5万7818軒となっています(日本フランチャイズチェーン協会「JFAフランチャイズチェーン統計調査」より)。つまり、歯科医院はコンビニと同じくらいかそれ以上に多いわけです。都会であれば、歯医者さんが多すぎて、どこへかかるか迷うほどかもしれません。
歯科医師国家試験の合格基準が引き上げられた背景
かつて、日本が高度成長期を迎えた60~70年代は、砂糖入りのお菓子など食べ物が豊富に手に入るようになり、「虫歯の洪水」と呼ばれたほど、歯医者さんに患者が押し寄せました。歯医者さんたちは「札束を鼻紙代わりにした」と言うほど儲かったそうです。今でも、「歯医者さんはお金持ち」というイメージを持っている人がいるかもしれません。
ところが、口腔衛生の意識が向上し、歯に悪い食べ物も減ったおかげか、虫歯で歯が真っ黒という子どもはめっきり見なくなりました。一方で、歯医者さんの数がどんどん増えてしまったため、歯科医院1軒あたりの患者数が減り、「ワーキング・プア(働いているのに貧乏な人)」もいるとささやかれるほど、歯科医院の経営が厳しくなったのです。
歯科医師国家試験の合格率も03年までは医師国家試験と同様に、ほぼ8~9割で推移していました。しかし、このままでは、ますます歯科医師数が過剰になると推計されたことから、06年に文部科学大臣と厚生労働大臣が「歯科医師の養成数の削減等に関する確認書」を取り交わし、歯学部の定員削減を各大学に要請するとともに、「歯科医師国家試験の合格基準を引き上げる」、つまり合格率を低くすることにしたのです。
歯科医師国家試験の合格基準が引き上げられた結果、歯学部の学生は大変な状況に追い込まれています。大学別の合格率ランキングを見てみましょう。