4月9日に日本政府が発表した新紙幣。10000円札に渋沢栄一、5000円札に津田梅子、1000円札に北里柴三郎といずれも明治以降に活躍した人物が選ばれた。ところが、これに猛然と噛み付いたのが韓国メディアである。特に槍玉に挙げられたのが渋沢栄一だった。「日本の新10000円札の主人公は経済侵略の渋沢」(ハンギョレ新聞)、「日本の10000円紙幣 新しい顔は『韓(朝鮮)半島経済侵奪主役』渋沢」(東亜日報)など、歴史問題を引き合いに批判的な論調を展開した。

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 こうした韓国側の声が伝わると、日本側には「またか」という雰囲気が醸成された。当然、怒りの声もあったが、インターネットなどへのユーザーの書き込みを読むと、「いつもの“反日”が出てきたのか」という諦めに近い反応が大半だったように思える。

 そんな“渋沢栄一10000円札騒動”の真っ只中、本誌記者は取材のため、韓国・ソウルを訪れた。滞在中の4月11日、ソウルにある汝矣島(ヨイド)公園で「第100周年 大韓民国臨時政府樹立記念式」というイベントが行われるというので、足を運んでみることにした。汝矣島は韓国の国会や議員会館などがある、日本でいう永田町である。桜の名所としても有名だ。

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汝矣島公園 ©文藝春秋

3・1独立運動から100年

 2019年は、1919年の日本統治時代に起きた3・1独立運動(三一節・サミルチョル)からちょうど100年目だ。先月1日にソウルで三一節100周年記念式典が大々的に実施されたことは日本人の記憶にも新しい。文在寅政権が昨年末から立て続けに“反日政策”を取り続けていたことから、“三一節100周年イベント”では攻めるものかと思いきや、意外にも当日の文在寅大統領の反日テンションは低め。「力を合わせ被害者の苦痛を実質的に癒す時、韓国と日本は心の通じる真の友となる」などと殊勝なコメントを発表してお茶を濁していた。

 だが、その後も日韓関係は好転していない。それどころか、京畿道議会における「戦犯企業ステッカー条例案提出騒動」、文喜相(ムニサン)国会議長の2度目となる「天皇謝罪発言」など、韓国では立て続けに日本世論を刺激する事態が続いている。