文在寅大統領は欠席
細部に至るまで派手な演出が施されたイベントだったが、肝心の文在寅大統領の姿がどこにも見当たらない。記念スピーチをしたのも文在寅政権のナンバー2・李洛淵(イナギョン)国務総理である。それもそのはず、文在寅大統領はその瞬間、アメリカにいたからだ。前々からこのイベントに参加する予定だったのだが、直前に米韓首脳会談の開催が決まり、流石の文在寅大統領でもそちらを優先せざるをえなくなってしまった。黒田氏はこう言う。
「今回の文在寅大統領の欠席は、政権からすると“痛恨”の出来事でしょうね。主役がいないのではイマイチ盛り上がりませんから。ちなみに、今回の米韓首脳会談の日程が決まった後、こんな噂が流れました。『アメリカ(トランプ大統領)はこのイベントが行われることを知って、あえて4月11日に首脳会談を設定し、文在寅大統領を呼びつけたのではないか』と(笑)」
直接的な日本批判はなかった
大手紙・東亜日報の記者出身で日本通とも言われる李洛淵国務総理は今回のスピーチで直接的な日本批判は避け、「米国、中国、日本、ロシアなどと協力し、朝鮮半島の平和と共同繁栄を模索する」と落ち着いた論調を展開した。それもあって、イベント全体の印象としては“強い反日色”はそこまで感じられなかった。
しかし、国内の保守派をけん制する意味合いとはいえ、こうしたイベントを行い、かつてのテロリストを英雄と崇めたり、記念館を設立して国家として彼らの存在を崇め、美化することで、日本の心は離れていく。日本人を無用に傷つけることは、日韓関係をさらに悪くする。韓国はそれを認識すべきではないだろうか。同時に、日本も韓国との距離感をうまく掴む必要がある。そのためには、韓国のことをよく知り、分析しなければならない。黒田氏をはじめとする5人の韓国専門家が登場している『文藝春秋』4月号の座談会「『日韓断交』完全シミュレーション」は、きっと、その助けになるだろう。