まるで夏フェスのような会場
そして、今、日韓関係が最悪な最中に行われたのが、今回の“大韓民国臨時政府100周年記念イベント”だ。「大韓民国臨時政府」とは、日本統治下の朝鮮半島における独立運動を進めていた李承晩(イスンマン)初代大統領や金九(キムグ)ら独立運動家が、中国の上海で設立した組織である。彼らは「臨時政府」を名乗っていたものの、国際的な承認は得られることがなかった。そんな組織の設立記念日をなぜ国家的に祝う必要があるのか。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が解説する。
「今までは韓国でも、独立運動が起きた三一節の3月1日が大衆的関心の対象であり、毎年祝われてきました。しかし、大韓民国臨時政府が設立された4月11日を国家行事として祝うのは初めてのこと。大韓民国臨時政府の存在は歴史学者の研究対象であったものの、一般的には全く重要視されてきませんでした。ところが文在寅政権の強い希望によって、“大韓民国臨時政府設立の日”についても、今年、100周年記念式が行われることになったのです。今後、4月11日を3月1日同様、国家記念日に制定したいという目論見もあります」
では、どんなイベントなのか。会場を覗いてみよう。
本誌記者が汝矣島公園に設置された特設会場に到着したのは午後6時頃。受付を済ませて中に入ると、正面に巨大な舞台とスクリーンが設置されていた。まるで夏フェスのようだ。
“イベント政権”の細かな演出
まだ開始時間前だったが、舞台上では“前座”のような公演が行われている。若者の太鼓パフォーマンス、海洋警察庁の剣舞、シンガーソングライターのミニライブ……と色々な演目が用意されている。この時点では特に歴史的なことを示唆する物はない。
座席に用意されていたのは、パンフレット、カイロ、毛布、LEDライトの4点セット。やはり野外ライブに来たのではないかと錯覚しそうなグッズだ。
パンフレットによると、式の開始時間は19時19分。終了時刻は20時19分。中途半端な時間設定だな…と思うだろうが、これは演出だ。臨時政府樹立の1919、それを記念する2019。文在寅政権は派手な演出の国家行事を好む“イベント政権”と揶揄されるが、ここまで細部にこだわっているとは驚きである。