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ゲームセットと思ったらまだだった!……「子どもがまだ食べてるでしょうが」リクエストの味わい

文春野球コラム ペナントレース2019

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もしセーフ判定だったら……

 あのシーン、アウト宣告だったからあらためて試合終了となったが、もし万が一、リプレー検証の結果、セーフになってたらどうだったのか。まぁ、中田の足が離れたままだったというようなケースだ。4対0と点差は離れているけれど、ランナーがたまって打順はホークス打線の主軸にまわる。

 秋吉亮は経験豊かな投手だけど、このいったん終わったってことになった後、終わってなかったからもういっぺんエンジンかけ直せってパターンはどうなんだろう。ひとつ気持ちが緩んでしまって捉まったら、際限なくカンカン打ち込まれそうな気もする。うっかり丼を下げようとしたばっかりにクレームをつけられて、終夜営業させられるラーメン屋の悲劇(?)というか。いや、終夜営業だけじゃなく、ラーメン百杯出し続ける羽目になる悲劇(?)というか。

 あれがセーフだったら……、は仮定の話だから実際どうなったかなんてわからない。確実に言えることは二つ。1、審判は場の空気に左右されず、厳正なジャッジに専心していただきたい。2、渡邉諒はあんなイージーゴロ、送球ミスしてはいけない。特に2はね、GAORA映像がベンチの先発有原を抜いたんだが、(リクエスト前のほうの)ゲームセットの瞬間、口が「あぶねー」と言っていた。主戦投手に「あぶねー」と言われる内野手ではいけない。ラストアウトはいちばんしっかり取り切るべきアウトだ。

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 僕の知るかぎり「子どもがまだ食べてるでしょうが」リクエストは滅多にないケースだ。もし、他にもご存知の方がおられたらお知らせ願いたい。こう、ホラー映画でエンドマークが出たと思ったら、地面からニュッと手が出た的な落ち着かなさである。

 唯一、似てるなぁと思うのは2018年8月12日、京セラドームのオリックスvsロッテ戦だ。延長10回、中島宏之(現・巨人)がサヨナラヒットを放ったが、ロッテ井口監督がリクエストを要求した。サヨナラだから場内も歓喜爆発、殊勲の中島もチームメイトから水をかけられ、るかと思ったところで約5分間のリプレー検証に入ってしまう。その間、感情は宙ぶらりんである。ジョギングしてる人が赤信号で足踏みしながら待ってる状態。で、5分後、あらためてサヨナラが認められ、気を取り直して皆から水をかけられていた。ちょっとテンション的には無理していた。

 僕は単にスカッと爽快なだけじゃない、奇妙な読後感が残るので、面白かったのだ。内心、また出くわさないかなぁと思っている。

ラストアウトの殊勲者、中田翔選手 ©えのきどいちろう

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