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「LINE、使ってください」と、飲み屋の店長に頼み込んでた時代

「LINE、使ってください」と、飲み屋の店長に頼み込んでた時代

C Channel株式会社社長 森川亮さん #2

2017/02/05

 月に6400万人が使用し、今や当たり前のメディアになったLINE。女性向け動画配信メディアC CHANNELの社長、森川亮さんはもともとLINE株式会社の社長も務めた人物です。今回はどうしてこんなにLINEユーザーが増えたのか、その最初の一歩のお話を聞いてみました。

検索事業でGoogleさんからシェアを奪おうと画策していた

――LINEは東日本大震災が契機となってローンチされたそうですね。

 震災があって、いったん東京の会社を閉鎖し、一部のスタッフだけで福岡に移って業務を続けていました。2007年頃から社内で「次世代の検索」がテーマになっていて、いろいろなサービスのプランが出ていたのですが、震災時になかなか連絡が取れなかったり、スタッフの安否が確認できないといったことがあって、プランのひとつとして挙がっていたサービスに着目しました。スマートフォンに特化した、実名でやりとりするコミュニケーションツールにニーズがあるのではないかと考えたんです。福岡に移ってから1カ月半ほどで開発しスタートさせています。

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――LINEと検索というのがにわかに結びつかないのですが。

 前身のNHN Japanはゲーム企業のハンゲームジャパンが検索事業のネイバージャパンを吸収合併してできた会社です。オンラインゲームでのシェアは握ることができて、次は検索事業でGoogleさんからシェアを奪おうと画策していました。すでに多くの情報がウェブページからソーシャルに移っていたので、検索とソーシャルな情報の蓄積を、UGC(User Generated Contents:既存のメディアではなくユーザー自らが作り出すコンテンツ)的に連動させるサービスが必要だと考えたんです。2009年にスタートした「NAVERまとめ」もまさにそういった観点から生まれたものでした。

 震災直前は、LINEのアイデアのほかにもインスタグラムのような動画共有サービスのアイデアも検討されていて、海外のサービスのベンチマークをしているところだったんです。

――ユーザー同士のコミュニケーションで溜まった情報と検索を組み合わせるということでしょうか?

 概念としてはそうでしたが、NAVERまとめはコミュニケーションというよりも、専門家に近い人が情報を集めているイメージになってしまいました。韓国のNAVER検索はウェブ検索ではなくUGCからデータを引っ張ってくる仕組みになっていたので、こちらでももう少しコミュニケーションの中で情報が生まれるようにしたいと思ったんです。

 

 mixiでいえば「コミュニティ」のように気楽に共通の話題で盛り上がれる「NAVER cafe」や、画像とテキストをブログ形式で簡単にアップできる「NAVER pick」などもやってみたのですが、あまりうまくはいきませんでした。

 2010年に買収したライブドアに、最後に残っていたのはニュースとブログでした。アメーバブログのような日記のようなブログには検索の対象となるような情報は溜まりませんが、ブロゴスのようなものならデータとして意味のある蓄積になる。これらを検索に活かそうとしたんです。LINEもその一要素として構想されました。

――現実に、LINEとNAVER検索とは連動できたのですか?

 いろいろ試行錯誤しましたがうまくいかず、NAVER検索事業は2013年に終了しました。私はもう離れてしまいましたが、LINEはAIやbotのように、聞くと答えるといった人間型に近い検索サービスの可能性を考えていると思います。

 

――ウェブサービスはギーク(コンピュータ技術に造詣が深い人)やITに詳しい人が使いだし、徐々にマジョリティへと浸透していくという図式がありますが、LINEはむしろふだんネットをあまり使わない層が先行していたように見えました。

 PCとケータイの違いでしょうね。PCはギークから広がる文化ですが、モバイルは若い女性から広がっていくことが、iモードの事例でも証明されていました。それがスマホでも起こるだろうなと思っていたら、我々の予想を上回る結果となりました

 iPhoneアプリ審査でリジェクトされてしまったり、サーバーがダウンしたりとトラブルはいろいろあったのですが、初動から現在まで成長スピードが鈍化したことはほとんどありませんでした。