講演会でよく「未来を語ってください」と言われるというC CHANNEL社長の森川亮さん。今回はビジネスにおける進歩の本質や、儲けるためになすべき考え方など、森川さんの経営哲学を聞いてみました。あと、ペッパー君のお話も。
ITは諸行無常。同じことをしていてはまずい
――それにしても、いつも先端分野でお仕事をされてきたんですね。
伸びそうな分野はだいたいわかりますね。最先端をできない環境にいれば最先端ではなくなるので、できるところに行くというのが信条です。
――転換期になってからでは遅いから、先に動く、と。
常に先を見るようにしていて、もちろんすべてがわかるわけではないのですが、今あるものは必ずいつかなくなるんだ、という目で見るようにしています。とくにITは諸行無常の世界ですし、その次は何なのかを見定めないと自分が終わってしまいます。
――文藝春秋は出版メディアの中では古株ですので、「いつかなくなる」という発想をなかなか持ちにくいところです。
新聞社に招かれて「新聞の未来を語ってください」と頼まれることがあるんですけど、ぼんやりと見えているアイデアを語るときまって「そんなことできません」と言われるんですよね。じゃあ聞かないでくださいよと言いたくなる(笑)。
昨日も銀行の人たちに「若い人は大手航空会社を使わずにLCCを使っている。銀行業界も銀行版LCCを作ればいいんじゃないか」と話したら「私たちはどうなってしまうんですか?」と。それは僕にはわかりません(笑)。きっと「大丈夫ですよ」と言ってほしかったんでしょうね。でもそれも無責任なので。
――ぜひ文藝春秋でもお話を。
「大丈夫だと思いますよ」と話しますね(笑)。
同じことを続けるのはまずいんです。今日より明日、明日より明後日と進歩を続けないといけないと思っています。進歩にはver.1.0から1.01への変化と、2.0、3.0への変化があります。0.01の変化は社員の日々の業務から起きますが、2.0、3.0への進化は経営者が作らないといけない。いつもそのことを考えていますね。
――大きな変化は、社内で軋轢を生むこともあると思いますが。
目標数値を変えますね。売上は上がらなくてもいいから今週中に変えてくれ、とか。売上を保ちつつサービスも向上するとか、スタートから黒字化させるとかは無理なんですよ。最初は必ず思わぬ失敗がありますし。
0.01の微調整もすごく大事です。でも0.02、0.03と続くとお客さんはだんだん違いがわからなくなってしまう。「だったら値段を安くしてよ」となりますよね。
ITの分野はまさに諸行無常です。携帯ゲームのシェア争いなんて顕著ですよね。ダメだと思ったところがハードの変遷でいつの間にか復活していたりする。前の会社もガラケーのゲームでは立ち遅れたのですが、LINEが当たったので挽回できました。一回トップに立つだけではどうにもなりません。
――現時点で、動画は儲かりますか?
今はそんなに儲からないですね。すぐ儲かるものはみんなが入ってくるので、すぐに儲からなくなるというジレンマがあります。儲からない状態をどれだけ維持できるかがポイントですね。儲からないで参入を阻み、一人勝ちの状態を作る。
――でも儲からないと存続できませんよね。
たとえば、その間のお金を調達する、ということですね。あくまでもひとつの方法ですが。シェアの60%まで取ってしまえば、基本的には参入はできなくなるんです。とくに日本の市場ではチャレンジャーが少ないので、参入障壁となることが最適戦略になりやすいんです。