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F-35の中枢にある「センサー・フュージョン」技術とは

「センサー・フュージョン」は耳慣れない言葉かもしれないが、民生では近年注目される自動運転分野で必須技術とされている。複数のセンサーから得られた情報を統合的に処理することで、単一のセンサーからは得られない高度な情報認識を得る技術のことだ。

 F-35はレーダーをはじめとした電波情報、可視光、赤外線といった多様な機載センサーの情報に加え、データリンクによって得られた外部の情報も統合・処理することができる。これによって、従来は様々な計器や表示からパイロット自身が判断を下す必要があったことを、F-35側で処理してくれる。

F-35のセンサー類のひとつ、電子光学照準システム(EOTS)のモックアップ(筆者撮影)

 噛み砕いて言えば、面倒くさく複雑な要素をF-35がいい具合にまとめた上で、パイロットにビジュアルで提示してくれるのだ。これによりパイロットの負担が軽減され、戦闘に関わる判断に集中することができる(今日、ビジネスでも見られるOODAループを高速化させる、と説明されている)。

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 こういった機能実現のために、F-35は従来戦闘機よりもソフトウェアの比重が大きい。このため、ソフトウェアは絶え間なくアップデートされており、F-35が配備されている間はそれが続いていくものと思われる。

航空自衛隊サイトより

“遊び”をなくすことでコストを削減するシステムだが……

 と、ここまでF-35と従来の戦闘機との違いについて書いてみたが、民間のトレンドに大きく影響されていることがご理解いただけたと思う。とすると、F-35では民間で生じている問題が、当然のように起こるとみるべきだし、軍特有の理由で、民間以上に問題が深刻になる可能性もあるだろう。

 筆者が特に懸念しているのは、ALGSの部分だ。サプライチェーン・マネジメントは、全業務プロセスの最適化による、在庫低減・合理化がその主眼として説明されている。いわば、“遊び”をなくすことでコストを削減するシステムだ。トラブルがないうちは順調だが、いざ自然災害等で部品供給が止まると、すぐに工場の操業停止といったニュースになることはご承知の通りだ。兵器の場合、自然災害や人災に加え、有事では実戦による消耗や生産・流通への破壊活動が起きる事態は想像に難くなく、運用に重大な影響が出るのではないかと考える。

航空自衛隊サイトより

 いずれにせよ、このF-35は米軍の次期戦闘機に決定している以上、ほぼ確実に米国の同盟国でも標準的な戦闘機になることが決まっているようなものだ。戦闘機の自国での開発能力もなければ、その資金もない以上、友好国の戦闘機を購入せざるを得ないし、戦闘機の選定は外交的な力も働いてくる領域だ。寄らば大樹の陰は事実であれど、寄るのも高くつく……。