過去にはF-111で共通化に失敗している
実証機としてボーイング社のX-32とロッキード・マーティン社のX-35が試作・比較された結果、2001年にX-35をベースにして開発することが決定された。そして、米空軍向けのA型、米海兵隊向けのB型、米海軍向けのC型の3タイプの開発が始まり、航空自衛隊が採用したのはA型となる。
このような一機種統合を計画された戦闘機の前例として、1960年代に米空軍・海軍共通で開発されたF-111がある。F-111はフォードの社長であったロバート・マクナマラ国防長官肝いりの計画で、共通化によるコストダウンは、彼の自動車産業での経験が大きく反映されていた。
しかし、F-111の開発は難航。機体は想定より大型化し、共通化の試みは失敗している。F-35はF-111以来の共通化に向けた大計画となるが、大幅な計画の遅延や開発コスト上昇は、F-111と同じ轍を踏むことになった。なお、F-111の名誉のために付け加えれば、共通化には失敗したものの、湾岸戦争では攻撃機として大変な活躍を見せている。
巨大なサプライチェーンを構築する
従来の戦闘機では、機体の調達にかかる費用もさることながら、機体の維持にかかるコストも膨大なものになっていた。一般的に機体価格が1とすると、配備中の維持コストは2かかるとされている。この維持コスト費を1に下げることをF-35では目標にしている。
このために取り入れられたのが、ALGS(Autonomic Logistics Global Sustainment)と呼ばれる後方支援システムだ。ALGSによって、F-35の部品一つひとつは固有番号を振られて管理され、F-35保有国の間で国境を超えてやりとりが行われる。つまり、F-35配備国全体で巨大なサプライチェーンを構築し、ジャスト・イン・タイムで部品の生産・管理が行われることになる。現在の工業や流通でよく見られる手法だ。
日本においては、このALGSはF-35導入の障壁ともなっていた。F-35保有国で部品をやりとりする場合、それは恒常的に武器輸出が発生することを意味するからだ。これが武器輸出三原則に抵触するため、安倍政権は2013年3月に官房長官談話で、F-35の部品に関しては武器輸出三原則の例外とすることで解決している。