1月下旬、「掃除のカリスマ」“こんまり”こと近藤麻理恵氏の「3児が生まれてから家は散らかっている」といった発言がワシントン・ポストで取り上げられた。
<今までは片付けのプロだったので、常に家の中を片付けておくように頑張っていました。しかし良い意味で、あきらめがついたというか。今、自分にとって大切なのは、家で子供と楽しく過ごすことだと実感しています。>
(出典:Marie Kondo’s life is messier now — and she’s fine with it/「The Washington Post」2023年1月26日/筆者:ジュラ・コンシス)
近藤氏の正直でシンプルなこの発言は、アメリカで尋常ではないほどの批判を巻き起こした。
例えば、第95回アカデミー賞にもノミネートされていた映画『ウーマン・トーキング』の脚本家兼監督のサラ・ポーリー氏は、Twitterで「(近藤氏は)3人の子供を産んでから”片付けをちょっと諦めた”と認めている。3人の子供がいる間に、彼女に影響されて小さな封筒のように服を畳んでいた我々への公式な謝罪はどこだ!」と発言したことで各方面から批判を受け、ツイートを削除したのちに「ジョークだった」と述べた。
My tweet about Marie Kondo was a joke. I love her and of course I don't demand an "official apology." I forgot that humour does not always translate on Twitter.
— @realSarahPolley (she/her) (@realsarahpolley) January 30, 2023
そもそも、近藤氏が教える「こんまりメソッド」は宗教的に支持する人も多い一方で、「完璧主義すぎる」「非現実的だ」といった、徹底した掃除方法や片付け方に対する反発も常に存在していた。
彼女への反発は、アメリカ社会に根強く残るアジア人差別の風潮を浮き彫りにしている。
白人の書き手から近藤氏への攻撃
近藤氏は2011年にベストセラー本『人生がときめく片づけの魔法』をリリースしたことがきっかけで広く知られるようになった。日本では「世界的に有名になった断捨離推進のコンサルタント」と認識され、英語圏においても彼女の「こんまりメソッド=spark joyするものだけを捨てずに取っておく」という考え方は有名である。
世界中で注目を集める一方、彼女の発言、存在そのものはアメリカで常に(不必要なほどに)物議を醸してきた。2019年、Netflixにてリアリティ番組「Tidying Up With Marie Kondo」がリリースされた際も、白人の書き手を中心に彼女に対する攻撃的な記事やツイートが大量に発生した。