物議をかもした「電波停止もありうる」発言
辞任に至らなくても、失言、問題発言で批判を浴びた閣僚はまだまだいる。麻生太郎財務相は度々、失言を繰り返している。第1次の厚労相・柳澤伯夫氏は自民党県議集会で「女性は産む機械」と発言し、その場で謝罪した。第3次の総務相・高市早苗氏は憲法改正に反対し放送を続けることに対して「電波停止もありうる」と発言して、言論統制ではないかと物議をかもした。彼らは自分がどんな発言をしたのかわかっている。だから柳澤氏は発言したその場で謝罪したし、高市氏は発言を撤回せず説明を続けたのだ。
一昔前は渡辺美智雄元副総理や中曽根康弘元首相など、政治信条などがその裏にあるような確信犯的な失言が多かったと思うが、今の失言は軽薄で自己中心的になってきている。
第2次の特定秘密保護関連の担当相だった森まさこ氏は、記者会見で「今私が(秘密に)入るか入らないか判断できない」と発言。その後の国会でも、しどろもどろな答弁を繰り返した。元自衛官だった第3次の防衛相の中谷元氏も安保法制に関する答弁では、しどろもどろ振りが非難されて国会が度々中断した。第3次の法務相・金田勝年氏は、国会答弁で「私の頭脳が対応できていない」と答え、第3次の沖縄北方担当相・島尻安伊子氏は「歯舞」という漢字が読めなかった。桜田前五輪相の数々の失言と重ねると、知識不足や勉強不足が原因の失言などは辞任に至らないということだろう。
発言内容からタイプを分けてみると……
第2次の環境相・石原伸晃氏は、除染の地元交渉について記者団に「最後は金目でしょ」と発言、批判を浴びた。第3次の地方創生・規制改革担当相の山本幸三氏は、三原朝彦議員のアフリカ支援活動に「なんであんな黒いのが好きなんだ」、地方創生セミナーでは「一番のガンは文化学芸員」と差別的な発言をした。かなりアウトな発言だと思うが辞任には至らなかった。
これらの発言内容からタイプを分けてみると、麻生氏や高市氏のように、自分の発言内容がわかっている確信型、松岡氏や松島氏のように記者や野党の追及に反応した誘導型、うっかりや受け狙い、リップサービスなどの自爆型になろうか。辞任に至った閣僚たちは、この自爆型がほとんどだ。受け狙いやリップサービスによる失言、問題発言も彼らがそう思っている、そう感じているからこそ口から出てくると考えれば、その発言は彼らの本音に近いといえる。
自爆型の中には、失言しても指摘されるまで気がつかない政治家もいる。言葉に対する関心や問題意識も低いのだろう。人前での自分の発言や言葉使いに気を付けていれば、つい勢いで口から言葉が飛び出したとしても、「あっ、やばい!」と内心思うはずだが、そんな気付きさえない。日頃から自分がどんな言葉を使い、どう表現しているのか、どんな話し方をしているのかに気を付けていないのだ。言ってはいけない言葉、リスクとなる表現に注意が向いていれば、仮に失言をしてもその場で謝罪や撤回ができる。自分の口から出た言葉の重さを理解していない閣僚が多くなっている。