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「内輪」でも、もはやクローズされた場ではない

 辞任閣僚の失言は、そのほとんどが集会や後援会で飛び出している。江崎氏が記者団に発言したのも後援会の会合後、内輪意識が残っていた中での失言と言える。内輪で何を言っても許された時代はネットの普及とともに終わっているのに、これまでと同じ感覚で発言している。内輪の場は、もはやクローズされた場ではない。

 内輪受けを狙った自虐ネタやリップサービス、場の流れや雰囲気にのまれた発言、笑いと失笑の違いがわからない独りよがりな感覚。人に面白いと思われたい、受けたい、「さすが!」と思われたいといった承認欲求が強いのだ。ところがこれを言ったらどうなるか、それをやったらどうなるか、深く考えておらず、先のことまで考えが及んでいない。それにより批判を浴びる派閥や内閣。失言が起きた背景や状況を見てみると、なんだかちょっとバイトテロ問題と似ているような気がしてしまう。

第1次安倍政権の閣僚 ©文藝春秋

「安倍一強」とも言われる第4次の内閣では、安倍首相が閣僚を任命した背景には、選挙や派閥の力学も大きく影響しているとみられている。安倍首相も失言やら問題発言をしているが、それは横に置いておいて、当選回数で大臣にしてしまう時代遅れの年功序列、派閥同士の力関係、続けざまに辞任閣僚を出した二階派のやり方も問題視されている。

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派閥にも特徴がある

 辞任した閣僚を派閥で分けてみた。カッコの中は当時の派閥であり、細田派は町村派の、竹下派は津島派の、二階派は伊吹派の流れをくむ。

細田派:松島氏(町村派)、稲田氏、松本氏 
麻生派:務台氏、塚田氏 
竹下派:久間氏(津島派) 
二階派:松岡氏(伊吹派)、今村氏、江崎氏、桜田氏

 失言した女性閣僚は二人とも細田派だ。他に細田派では、麻生内閣の元国交相・中山成彬氏が「成田空港整備の遅れはゴネ得」などと失言して辞任。細田派は少々、偏った見方からなる失言になっている印象だ。麻生派の2人は、受け狙いのリップサービスによる失言だ。派閥も組織だ。組織の色やスタイルはリーダーや組織文化に影響されるところがあるだろう。

二階俊博幹事長 ©JMPA

 二階派は辞任閣僚が多く、失言内容はひどい。今村氏や桜田氏は二階派への移籍組である。大臣になることが目的だった資質のない人間を、当選回数だけで大臣のポストに押し込んだと言われても仕方がない。これだけで傾向があるとは言えないが、今のところ一番問題が多そうなのは二階派という印象だ。

失言を防ぐにはどうしたらいいのか

 いまやメディアは、どんな番組でもコメンテーター中心だ。また、どこにでも誰かの目があるネット社会では、ユーザー全員がコメンテーターであると言っても過言ではない。それは政治家も等しくターゲットになることを意味していて、不祥事や失言の際は、いわゆるメディア対応のうまさだけでは切り抜けられない。

 では、辞任閣僚を他山の石として、失言を防ぐにはどうしたらいいのか。まずは日頃から自分が人と話す時に、どんな言葉を使い、どのような表現をしているのかに注意を向けることだ。できれば焦った時や、調子に乗って話している時などを思い返してもらいたい。商談やプレゼンなどを録音しておいて、それを聞いてみるのも役に立つ。場に飲まれやすい人や緊張しやすい人は、公的な場で自分の言葉で話す時ほど、本音よりも建前的な表現を使って話す方がいいだろう。言い切りや断定口調にも気をつけたい。ネガティブな言い方ではなく、ポジティブな言い方をするよう心がけることもポイントだ。