昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/05/12

道路沿いの商店は、すべて違法建築だったので壊す

 北京の住宅地は、まるで街づくりゲーム「シムシティ」や「A列車で行こう」で作られた街のようなんですよね。かつて雑居ビルや小さな住宅が密集するエリアがあって、それをコントローラーのボタンひとつで「ボンッ」と更地にして、高層マンションやオフィスビルをボタンプッシュで「ドンッ」と建てる。1階部分には商店はなく、人の匂いがないような計画的な世界で、住民が外で買い物をすることも食べることも時間がかかりそうです。

 そんなシムシティで作られたような北京の住宅地は、少なくとも旅行者にはえらい不便な街だな、無機質な街だな、とは思ったものです。ちょっとは北京に旅行に行く外国人旅行者のことも考えてくれよ。

北京に残る数少ない無人コンビニ「小麦鋪」 ©山谷剛史

 北京では「開墻打洞」というキーワードをもとに、道にせり出した個人商店や食堂を一掃する動きが特に2017年以降進んでいます。開墻打洞」は文字的な意味で言うなら「こわせ! こわしまくれ!」、マイルドに言うなら「壁をなくそう、道をひらこう」となります。

 かつて北京でも見られて今はなくなった道路沿いの商店の並びは、すべて違法建築だったので壊す。これにより綺麗さっぱり、道は広がり、通りの景観はよくなる。おまけに店をやりくりしていた、北京住民よりは貧しい外地人を追い出すことができたというわけです。貧富の差による犯罪やトラブルのもとを一掃したとも現地では解釈されています。

何も店がない通り。宅配バイクが頼りだ ©山谷剛史

案外不満が出ていないという実情も

 北京の名門大学「清華大学」の研究生が発表した「ビッグデータと都市計画」に関する論文で、北京のシムシティ化について調査を行っていました。その中で住民にアンケートを行っていて、シムシティ化の結果として「多くの店がなくなり不便になった。特に老人への影響が大きい。まずは閉店前に代替えの店を設置すべき(設置していなかった)」「ある日突然連絡なく道路沿いシムシティ化作業が始まるので移転の補助をしてほしい(していなかった)」「店をなくして道路が広がったが代わりに違法駐車が増えた」などという点で地元民からの不満があがっているそうです。

急激に店舗数を増やす「便利蜂」 ©山谷剛史

 街がシムシティ化したらそりゃ不満は出るだろうと思うところです。しかし、北京で長く在住する日本人にヒアリングをしてみると、案外そうでもない実情もあるようです。

「野菜も卵も牛乳もスーパーから届けてもらえますしね。ネットが活用できない老人とてスーパー行けば物売ってるし、家族がネットで注文してくれるし」

「コンビニチェーンがなくなっても、別のコンビニチェーンが台頭してくるので、近所からコンビニが消えるなんてことはないですね」

「スモーカーへの打撃は結構おおきかったですね。デリバリーがタバコに対応してなくて、小さい店がなくなって、とにかく近場でタバコが買える店が減って……」

「夜中まで仕事してる人がちょっとしたものを買うのに使ってたお店がなくなって、不便になったという声は結構あります」

……こんな意見がありました。