「中国のIT化がスゴい」といわれる現在においても、中国旅行に、昔ながらのごちゃごちゃ感を期待する人はそれなりにいると思うのですよ。ごちゃごちゃ感とは、例えば見るからにチープな商品が並ぶ不揃いな店だらけの商店街だったり、通路の真ん中まで商品や長椅子に座って寝ている店員が飛び出したりしている光景です。

 もちろん高層マンションが市街地に立ち並ぶ今となってはなかなか見つけづらくもありますが、ほとんどの都市において個人商店や安食堂が道路沿いに並んでいて、そこでのB級グルメやジュースやお菓子などで胃袋を満たすことができます。

こういう光景もどんどん見られなくなっている(鄭州で撮影) ©山谷剛史

住宅地ともなると味気ないのにも程がある

 ところが中国の首都・北京だけは別。この1、2年は北京の路地から個人経営の商店や食堂が消えていっています。北京の街中の観光地では、お土産屋も商店も並ぶので、そんなに違和感はないのですが、普通の住宅地ともなると味気ないのにも程がある。

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 中心部に近い住宅地や商業地ならコンビニもずいぶんありますが、筆者が選んだホテルはやや郊外の立地でした。ちょっとジュースかお菓子でも買うかと散歩するも、歩けど歩けど商店ひとつ見当たらず。以前は見かけた麺やご飯を出してくれる食堂もありません。日本のように路上に自動販売機があるわけでもない。

店舗レスを実現した通り。店や広告はないがプロパガンダだけはある ©山谷剛史

 スマートフォンアプリから借りられるシェアサイクルを借りてサイクリングをするも、他の都市ではあるはずの個人商店も食堂もなくなっているのです。進んでも進んでも、高層マンションが何棟もある大規模団地を囲う壁や柵がひたすら続きます。他の都市に比べて歩いている人もまばら。ならばスマートフォンを取り出し、地図アプリからコンビニを検索するも、あるはずのコンビニは閉店する始末。夜になって屋台が出るならまだ味があるのですが、屋台もない。

 筆者は中国の地方都市の大規模マンションに拠点がありますが、家のドアからマンションの外に出るまで徒歩5分で、マンションの外側に張り付くように商店や食堂が並ぶのですが、ちょっとした買い物や食事でも、往復10分かけなければいけないわけです。北京ではその商店や食堂すらないわけで、これは大変だなあと思ったものです。