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「どんな本も身分に上下はない」

 この店で創業者の故・高原坦氏はユニークな仕組みを導入する。広いフロアをAとBの2フロアに分け、昔ながらの古書をAフロアに、Bフロアには比較的近年に出版された一般書を定価の半額で並べたのだ。普通の本を定価の半額で売るのは、長期間売れない本や多少汚れている本を100~200円の均一棚に回すブックオフを中心とした新古書店の販売システムの先駆けといえ、本の知識がないアルバイトでも機械的に値付け作業ができる。高原氏は多くの古本屋が希少価値の高いいわゆる「古書」や専門書を扱っていた70年代からこのスタイルを取り入れており、業界内では異端の存在だったと言う。

 筆者は98年に初めてPOPビル時代の高原書店を訪れ、その広さに圧倒されると同時にBフロアの半額本棚を見るのに夢中になった。当時店舗数が300(現在は800超)と規模を拡大しつつあったブックオフはあくまできれいな状態の古本を売るビジネスモデルだが、高原のそれはまさに玉石混交。中には状態的には多少難があっても各ジャンルのレア本が結構見つかるのだ。そこがブックオフとの決定的な違いで、安くは売っていても本に対する愛情が感じられた。かつて雑誌『東京人』で高原社長に取材した評論家の坪内祐三氏は「高原さんは本を本として、どんな本も身分に上下はないという信念を持っていた」と語っている。(※)

あらゆるジャンルの本が学習塾の教室だった場所に詰め込まれていた。 ©黒田 創

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 売り上げを伸ばし、横浜にドリームランド店、新大久保に新宿古書センターをオープンするなど順調に事業を拡大していたが、お膝元である町田に99年、日本最大規模のブックオフ町田中央通り店がオープンしたことで打撃を受ける。これを機に支店を閉め、2001年には家賃の高い駅前店舗から少し離れた現店舗に本店を移転する。冒頭で触れた通り、これがPOPビル以上の大型店舗だったことで訪れた人を再び驚かせた。また同時期にサイトでの販売をスタートさせ、02年にはアマゾンマーケットプレイスとも提携するなど、古本のネット売りでも業界の先駆者となる。それを可能にしたのは徳島の倉庫にある200万冊の膨大な在庫。「現在の私たちにとって価値が低いと思われる本が、後の時代の人にとって別の価値を持つこともあるかもしれません。しかし、私たちが本を残そうとしなかったばかりに、その本がもう読めない、あるいは非常に高価で一部の人しか手に入れられないということになっては問題です」と同店ホームページに綴られているが、本当にどんな本でもあるのが高原書店だった。