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2019/05/24

genre : エンタメ, 読書

三浦しをんさんが働いていたことでも話題に

 2006年には三浦しをん作『まほろ駅前多田便利軒』が同年上半期の直木賞を受賞。三浦氏が作家活動を始めた時期に高原書店で働いていたことが話題となる。作品の舞台が町田をモデルとしていることもあり、映画化された際には高原書店の主導で町田駅から店舗に至る市道に「小田急北口まほろ横丁」という通り名が数年間実験的に付けられた。店内には三浦氏をはじめ、町田に縁が深い白洲正子のコーナーなども設けられ、こうした点も読書家を引き付けた。また吉祥寺のよみた屋、西荻窪の古書音羽館など、かつて高原書店で働いた方たちがその経験を基に個性的な古本屋を営んでいる。

 個人的には20年通い続けたが、ここ数年は訪れても棚の在庫が入れ替わっていないように思え、かつてのワクワクを感じられなかったのが正直なところ。倒産の一報が流れた5月9日の前日8日、数か月ぶりに本を探しに訪れたら玄関のドアが半開きになり、定休日でもないのに臨時休業の張り紙が。変だなと思っていたが、その時点でもう閉店していたことになる。4月初旬からすでに臨時休業状態だったという。

映画『まほろ駅前狂騒曲』ポスターの上に貼られた閉店のお知らせ。 ©黒田 創

 創業者である高原坦氏は糖尿病を患い2005年に亡くなっているが、その1年ほど前に店舗で値付け作業を行う高原氏を目撃したことがある。椅子に座り身体もしんどそうな様子だったが、真横でスタッフが書名と本の状態を読み上げると張りのある声で「2500円」と売り値を答えるのだ。それは淡々と、小一時間ほど続き、冬場のしんとした店内に静かに響き渡っていた。その光景は今でも目に焼きついている。

(※)『別冊本の雑誌16 古本の雑誌』(本の雑誌社)「高原書店について語ろう!」より。

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