佐賀県関係者は「都合のいい試算で結論を急ぐ与党が許せない」
武雄温泉―長崎間はすでに6割の工事が終わっている。長崎県と政府与党の検討委員会は佐賀県にフル規格の新幹線か、在来線が使えるミニ新幹線の2つの案を提案しているが、佐賀県は莫大な費用がかかるフル規格の新幹線も、在来線のダイヤを乱すミニ新幹線のどちらも拒否。
佐賀県の山口知事は4月の検討委員会の場で「新幹線整備を求めたことはないし、今も求めていない」と不快感を示している(朝日新聞デジタル 5月20日)。また、「これまで、関係者間で合意されているのは武雄温泉~長崎間の新線整備と、新鳥栖~武雄温泉間は在来線を利用することだったはず」とも主張(乗りものニュース 4月26日)。佐賀県関係者は「財政負担だけの問題ではないのに、都合のいい試算で結論を急ぐ与党の姿勢が許せなかった」と山口氏の心情を代弁した(西日本新聞 4月27日)。
佐賀県は議論に応じない姿勢を示している。一連の問題について、鉄道に詳しいライターの杉山淳一氏は「佐賀県は『間違った手続きには応じない』」「佐賀県の態度は法治国家として正しい」と評している(ITmediaビジネスオンライン 5月17日)。これらの背景があった上で、谷川氏は佐賀県知事のことを「韓国か北朝鮮のようだ」と言い放ったのだ。
「北朝鮮は言い間違い」と訂正
谷川弥一 自民党・衆院議員
「北朝鮮という表現は言い間違えで訂正している。韓国については思いやりを持ち、交流できる関係であってほしいという思いだった」
日テレNEWS24 5月20日
「国交がない北朝鮮に例えたのは明らかな間違いで、真意ではない。情のある対応をお願いしたいという意味だった」
佐賀新聞LiVE 5月22日
谷川氏は発言後、取材に応えて発言を訂正、「配慮を欠いた発言だった。佐賀県民におわびしたい」と謝罪した。谷川氏は「とりつく島のない佐賀県の対応が、日本との関係がぎくしゃくしている韓国のように感じ、その場で山口知事に伝えた。そのときは北朝鮮の名前は出さなかった」と釈明している。
つまり、谷川氏は山口知事に対して「韓国のようだ」とは言ったが、「北朝鮮のようだ」とは言っていないらしい。「北朝鮮のようだ」とはトンネル視察のときに口が滑ったようだ。
谷川氏は北朝鮮、韓国との友好を目指して設立された超党派の「朝鮮通信使交流議員の会」の幹事長を務めている。一方、掲げている政策の1番として「安全保障の整備」で「対北朝鮮、タリバンのテロ対策」と記されている。
谷川氏は韓国とは交流できるはずだが現在は関係がぎくしゃくしているという考えがあり、佐賀県を韓国になぞらえたのだと考えられる。また、北朝鮮は言い間違いだと躍起になって否定したのは、谷川氏が北朝鮮をテロ国家だと認知しているからに他ならない。