来年に迫った東京五輪で「会場で一番観戦したい競技」に陸上競技が選ばれたという。国内で非常に人気のあるマラソンや、リオ五輪で銀メダルを獲得した4×100mリレーも含めた群雄割拠の男子短距離陣などに興味を持つ人が多いのだろう。
しかし、ここでぜひ、五輪前の今だからこそ皆さんに注目してほしい競技がある。それが、活躍著しい跳躍系種目だ。
一気に世界大会の優勝候補へと躍り出た
実は今、日本の跳躍系種目が世界的にも躍動しているのをご存じだろうか。メダル圏内どころか、金メダルも現実的に狙える記録を連発しているのだ。
その筆頭が、男子走り高跳びの戸辺直人(JAL)だ。今年2月にドイツの室内競技会で日本記録となる2m35cmを記録すると、勢いそのままに世界室内ツアーでも総合優勝を飾った。現在の世界ランキングは5位だが、今季跳んだ2m35cmは世界トップの記録。これまで世界陸上、五輪を通じて日本勢はメダルすらなかった同種目で、一気に世界大会の優勝候補へと躍り出た格好だ。
5月19日に大阪・長居陸上競技場で行われたゴールデングランプリでは、2m27cmの記録で優勝。この大会は、国際陸連主催の年間シリーズ「IAAFワールドチャレンジ」のひとつで、各種目に世界ランキング上位の選手が出場するハイレベルな大会だ。
194cmという長身ジャンパー
記録的には自己ベストに及ばなかったが、強風のコンディションや本人も「苦手意識がある」という長居の固いサーフェスの中でも世界の強豪にしっかり勝ちきれたことで、かえって地力の強さを見せる形になった。
「今年は日本記録を跳ぶことはできましたけど、それ以上の記録を目指しているので、今の技術をさらに修正して、よりよい形にしたいですね。世界のトップ選手は皆、すごく勝負強い。世界選手権や五輪で自分の力を出せないと意味がないので、そういう選手になりたいですね。6月の日本選手権に向けて一度、跳躍をまとめて、9月の世界陸上へ仕上げていく形にしようかと思います」
194cmという長身ジャンパーの戸辺は、中学・高校とともに日本一に輝き、2010年の世界ジュニア選手権では銅メダルも獲得した。
もともともっていたポテンシャルは非常に高いものがあった一方で、これまでの日本人が到達していないフィールドだけに、その歩き方を模索しながら成長を続けてきた。