昨年、不正入試が発覚して大きな問題となった東京医科大学が、不正に不合格となった受験生に補償金額の提示を始めていると報道されました。一人当たり10~600万円を提示していると見られ、受験生からは「不合格になったことでかかった費用を考えると、あまりに安い」という声が上がっていると報じられています。

 具体的には、不正発覚後の18年秋に再判定で追加合格となった受験生のうち、他大学の医学部に進学した人には1年あたり300万円、予備校に通うなどした人には1年あたり100万円、再判定後も同大への入学を希望しなかった人は10万円が提示されているとのことです(朝日新聞「東京医大、不正入試で補償金額提示 『安い』受験生反発」2019年5月16日)。

 果たして、この補償金額は妥当と言えるのでしょうか。本来なら慰謝料なども加味して換算すべきだと思いますが、法律的な妥当性は専門家の判断に任せるとして、とりあえず医学部に入るにはどれくらいの費用がかかるのか、調べてみました。

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訴状を提出するため、東京地裁に向かう原告側弁護団 ©共同通信社

大手予備校の医学部専門コースは年間80万超

 まずは、現役で受からなかった場合の予備校から。一般的に予備校に通う費用は入学金、授業料、諸経費(テキスト代や模擬試験代など)を合わせて、年間70~90万円ほどかかるようです。

 しかし、医学部は国公私立問わず難関なうえに、小論文や面接など特別な対策も必要です。そのため、各予備校では医学部専門のコースが設けられています。たとえば、ある大手予備校の場合、北大や東北大などをめざす「トップレベル国公立大医進」コースを都内の校舎で受けた場合、費用は入学金と授業料の合計で84万5000円かかります。

年間400万以上かかる医学部専門予備校も

 ところがこれが、慶應大や順天堂大などをめざす「ハイレベル私立大医進アドバンスコース」になると、入学金と授業料合計で201万円に、さらに「ハイレベル医進アドバンス個別指導つきコース」だと351万円に跳ね上がります。

 それに医学部をめざす人には、大手予備校の医進コースだけでなく、医学部受験に特化した予備校もあります。ある医学部専門予備校の授業料の目安を見ると、入学金30万円に加え、授業料の目安として高卒生で年間436万8000円(!)とありました。さらに、食費や寮費が別途加算されるので、年間500万円は必要でしょう。
 
 東京医大を不正に不合格になった人の中には、予備校の私立大学医学部をめざすコースや医学部専門予備校に通った人もいるのではないでしょうか。そのような人からすると、1年当たり100万円という補償額は、予備校の費用の3分の1~5分の1にしかならず、確かに安すぎると言えそうです。