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最大5000万円近くの差 なぜ医学部はこんなにも「学費格差」があるのか

東京医科大学の補償金額は多い? 少ない?

2019/05/29
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不本意に国立大学医学部に合格した人がいるとは考えにくい

 次に、他の医学部に合格した場合の費用はどうでしょう。まず、国立大学医学部に合格した場合です。国立大学は一律に決まっていて、入学金が28万2000円、1年間の授業料が53万5800円で、1年目の納付金は合計81万7800円となります。これに教科書代や実習費などがかかりますが、1年目は100万円もあれば十分でしょう。

 公立大学の納付金も国立大学に準じるところがほとんどです。ただし、県立だと県外、市立だと市外に居住する人は、入学金が高くなります。たとえば福島県立医大は、入学金、授業料とも国立大学と同額ですが、県外者は入学金84万6000円で、他に諸会費等(後援会費、学生会費、同窓会費、医学部学生総合補償制度)で39万4000円かかります。したがって、福島県内の人は1年目に121万1800円、県外の人は177万5800円必要です。

 また、自治医科大学は在学の1.5倍の期間、指定された医療機関に勤務することで学費が免除されます。防衛医大も1.5倍の期間、自衛隊に任官することで学費が免除され、さらに在学中に給料(学生手当て11万3300円+期末手当2回)がもらえます。産業医大は在学の1.5倍の期間、産業医等として勤務することで修学資金が貸与されるので、初年度の実質負担額は232万5600円(入学金、授業料、諸会費・保険料の合計)となります。

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 したがって、東京医科大に不正に落ちたけれど、(不本意にも?)国公立医学部や自治医大などに進学したという人には、1年間300万円は十分すぎる補償額と言えるでしょう。ただし、授業料が高い私立の東京医大にあえて入りたかったのに、不本意にも国公立大学や自治医大に進学したという人は、現実的にいないのではないでしょうか。

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私立大学医学部に絞っても学費の差は最大2816万5000円

 となると、問題は自治医大などを除く私立大学医学部の入学費用です。「河合塾医進塾」のサイトによると、現在、6年間の総費用が最も安いのは国際医療福祉大学で1910万円、初年度の総費用(入学金+授業料)が460万円、次年度以降が280万円です。2位が順天堂大学(総費用2080万円、初年度290万円、次年度以降358万円)、3位が慶應大学(総費用2199万9600円、初年度383万3350円、次年度以降363万円)でした。

 一方、6年間の総費用が最も高額なのが川崎医科大学で4726万5000円、初年度の総費用が1211万5000円、次年度以降が700万円。最安値の国際医療福祉大学とは、なんと6年間で2816万5000円もの差があります。このように私立大学医学部の学費には、最安値から最高値まで大きな幅があります。