授業料が安いほど偏差値が高くなる?
私立大学医学部31校の平均を算出してみると、6年間の総費用が3218万6831円、1年目の総費用が738万2370万円、次年度以降が502万1097円と出ました。東京医大は6年間の総費用が2983万3700円、初年度が757万8700円、次年度以降が440万円ですから、私立大学医学部の中では総額で見ると平均よりやや安めということになります。
こうした実情から見ると、東京医大の提示した1年あたり300万円という金額は、最安値の国際医療福祉大学や順天堂大学、慶應義塾大学に入学できた人なら満足度の高い金額と言えるかもしれませんが、私立大学医学部の平均から見ると、もの足りないということになるでしょう。
とくに、私立大学医学部は、授業料が安いほど偏差値が高くなり、授業料が高いほど偏差値が低くなる傾向にあります。つまり、本当は東京医大に行きたかったのに、やむなく2次志望、3次志望の私立大学医学部に行くことになった人ほど、300万円では不十分ということになるでしょう。
東京医大だけでなく、医学部の不正入試によって人生を狂わされた人たちがたくさんいるはずです。失ったチャンスや年月を取り戻すことはできません。形ばかりの補償に終わらず、不正入試を二度と繰り返さないようにしていただきたいと思います。
私立は国公立の6~13倍になることも
それにしても、あらためて調べてみて、医学部の「学費格差」の大きさに驚かされました。最安値の「現役→自治医大あるいは防衛医大」だと、実質0円で医師になれます(防衛医大は給料までもらえる!)。また、国公立大学の場合は、現役で行けば6年間350万円で医師になれるわけです。
しかし、私立だと最低でも6年間で2000万円、平均で3000万円超、高い学校だと4000から5000万円近くもかかるのです。これは、国公立の6~13倍。しかも、もし1年間、医学部専門予備校に行ったとしたら、プラス200~500万円かかります。医学部進学ローンなどもありますが……。やはりよほど保護者に経済的余裕がない限り、私立大学医学部には行かせられないでしょう。
「儲けて学費を取り返したい」と思う医師を生みかねない
こうした学費格差が、医師のメンタリティに影響をまったく与えていないとは言い切れません。たとえば、自治医大、防衛医大、産業医大、国公立大などを卒業した医師は、「国民の税金で育てられた」という意識が生まれ、「患者に奉仕しなければならない」という使命感を持ちやすいかもしれません。
一方で、学費が極端に高い私立大学医学部を出た人は、「医師になったら儲けて、学費を取り返したい」と思うかもしれません。もちろん、そんな医師ばかりではなく、多くは「良医」になると信じたいですが、これだけ学費格差があると、そんな心配もしてしまいます。
医学部入試では「男女差別」や「浪人差別」だけでなく、「経済格差による差別」も深刻だと言えるかもしれません。どんな経済的環境にあったとしても、医師になりたいという志のある人が、平等公平に医学部入試に挑める世の中になったほうがいいと思うのですが、みなさんはどう思われますか?