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本当に「ウィンウィン」だったの? トランプの“ディール”にやられっぱなしの日米首脳会談

8つの発言で振り返る

2019/05/30
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「同日選だと確信した」と語る与党幹部もいる中、西村康稔官房副長官は27日、記者団に「選挙区が複数あり、選ばれる数も多いという意味で、参院選を念頭に置いて書かれたと想像する」と語り、火消しに追われた(東京新聞 5月28日)。

さらに日本側に譲歩を求める発言

ドナルド・トランプ 米大統領
「あらゆる障壁を取り除き、米国の輸出品が公正に日本の市場に根付くことを願っている」
「米国は
TPPには参加していない。他国とは違い、米国は縛られていない」
日本農業新聞 5月28日

 27日に首脳会談を行った後、共同記者会見に臨んだトランプ大統領は、メラニア夫人の誕生日を祝ったエピソードを披露し、「個人的信頼関係」「ゆるぎようのない緊密な同盟」「友情に感謝」「日米の立場は完全に一致」と蜜月ぶりをアピールする安倍首相を尻目に、さらに日本側に譲歩を求める踏み込んだ発言を行った(BuzzFeed NEWS 5月28日)。

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海上自衛隊横須賀基地での護衛艦『かが』視察にて ©JMPA

 日米共同声明で、日本政府は「農林水産品について全体として最も水準が高いものがTPP」と説明したが、トランプ氏はTPPを「米国の自動車産業、製造業を破壊していただろう」と一蹴。TPP水準の関税を前提とする日本側を強く牽制したのだ。

 トランプ大統領は「われわれは通商に関し、おそらく8月に何らかの発表をする見通し」とも言明したが(ロイター 5月27日)、安倍首相は質問には応えず。次のように語るのが精いっぱいだった。

安倍晋三 首相
「日米ウィンウィンとなる形の早期の成果達成に向けて、日米の信頼関係に基づき、議論をさらに加速させることで一致した」

日本農業新聞 5月28日

 TPP以上の譲歩を求めるトランプ大統領に反論することなく、具体的な回答を避けた安倍首相。共同会見後、西村官房副長官は8月合意・発表について首脳間で一致していないと説明した。

茂原カントリークラブにて ©JMPA

 なお、安倍首相は「加速させる」という表現が好きらしく、北方領土問題解決についてはロシアとの「日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速することで合意」(ブルームバーグ 2018年12月20日)したし、昨年10月の第4次安倍改造内閣発足時の記者会見では台風などの自然災害からの復旧と復興、東日本大震災からの福島の復興と再生、憲法改正に向けた作業と3つも「加速」を約束していた。「加速」とは一体何を指すのか。先行きの見えない事柄について“やってる感”を出すために使っているのが「加速」という言葉なのかもしれない。

「日本は米国の防衛装備の最大の買い手に」

ドナルド・トランプ 米大統領
「日本は米国の防衛装備の最大の買い手となりました。新たなF
35ステルス戦闘機を105機購入すると発表しました」
産経新聞 5月27日

 トランプ大統領が会見で喜んで語ったのは、最新鋭ステルス戦闘機、F35の購入についてだった。F35の値段は1機あたり100億円超。昨年末に閣議決定された防衛大綱と中期防衛力整備計画で、F35Aと中距離離陸・垂直離陸可能なF35Bをあわせて105機購入することになっていた(ブルームバーグ 2018年12月18日)。総額は1兆円を優に超える。