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2019/06/04

「加藤先生強すぎませんか?」

 加藤一二三九段の1324勝目は2017年1月20日の棋聖戦、対飯島栄治七段戦である。直前に自身の引退が確定し、あとは勝ち残っている棋戦を指すだけとなったが、「すべての対局に全力投球」は加藤の代名詞ともいえる。当時、B級1組に在籍していた飯島を圧倒し勝利。2018年度の最多勝利賞を受賞する佐々木大地五段をして「加藤先生強すぎませんか?」とツイッターでつぶやかせるほどのものであった。

「ひふみん」の愛称で親しまれる加藤一二三九段は、歴代3位の通算勝利数を記録している ©文藝春秋

 この勝利は、丸田祐三九段が持っていた公式戦最高齢勝利記録(76歳11か月)を更新(77歳0か月)する、偉大な勝利でもあった。

 引退後も気力の衰えをみせない加藤の、各方面でのアグレッシブな活動については、改めて触れるまでもないだろう。

「やはり羽生さんとはタイトル戦をやりたかった」

中原誠十六世名人 ©共同通信社

 中原誠十六世名人の1308勝目は2008年8月12日の王将戦、対木村一基九段戦。この一局に勝った後の感想戦の最中に、中原は体に異変を起こし、病院に緊急搬送される。脳内出血と診断され、即、入院となった。

 その後復帰を目指すも、「元通りというところまでは回復せず、対局は難しいと判断しました」と、2009年3月31日付で引退とした。引退の記者会見では、

〈もし悔いがあるというなら竜王戦ですね(2003年の第16期竜王戦挑戦者決定戦で森内に勝っていれば、羽生との七番勝負だった)。やはり羽生さんとはタイトル戦をやりたかったという気持ちはありました。あの頃は割合自信もありましたので、ちょっと残念という気持ちはありました。

 羽生さんと私は年齢差でいうと、私と大山先生くらいですから。私は大山先生とはずいぶんタイトル戦をやっていますのでね(筆者注・21回)。これに関してはこちらの方がちょっとだらしがなかったのかなと〉

 と、語っている。ちなみに最後の中原-羽生戦は2008年7月4日の銀河戦で、中原勝ち。大棋士の力はいつまでたっても衰えないものだと、改めて思わせる。

©文藝春秋

 通算勝利1位となった羽生だが、当然ながらその棋士人生はまだまだ続く。1500勝、あるいは2000勝にまで至るかもしれない。次の王位戦挑戦者決定戦の一番で勝てば、名人・棋聖と合わせて三冠を持つ豊島将之王位へのタイトル挑戦が決まる。多くの将棋ファンが望んでいるであろう、タイトル通算100期達成も、それほど遠くはないかもしれない。

 数字上では、孤高の道を歩むことになった現代の大棋士の戦いぶりを、これからも見ていくと同時に、観戦記者としてファンの方に少しでもその実像をお伝えできればと思う。

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